このレビューはネタバレを含みます
悪趣味で不条理な状況が次々と描かれること自体は、そのグロテスクで過剰な表現を渋々だとしても肯定して受け入れるが、問題なのは、表面的な異様さしか描いていないのに「これ面白いでしょ?」「これって変わってるでしょ?」からの「僕たち、あえて変なことやってるオモシロなんですよ」と欲しがりすぎている点で、誠実さや一貫性を欠いたまま、単にショックや衝撃を狙っただけの要素をイキイキと並べられても、こちらは冷めていくだけ。
粗雑な作りをあたかも斬新で奇抜な表現であるかのように見せかけ、うぶな観客をたらし込む、その弛緩した傲慢な態度。バラバラに撒き散らしても断片は重なり合う悪夢のコラージュ的な映画を目指しているのは理解できるが、三つの短編それぞれがありきたりで投げやりなのは普通に退屈。物語もキャラクターも意味を失い、ただよく分からない状況だけが残る…というのは狙いのような気もするが、こちらはそこまで付き合う義理などさらさらないわけで。
二章の乱交ビデオは、安っぽい洋ピンのリアリズムが漂い、割り切って怠惰なエロスに徹するならば、その筋の低俗さに戦いたかもしれないが、結局はこれも異常な世界であることを強気にアピールするための飾り程度で残念。三章のセックス教団(カルト)なんて、すでに手垢がついている設定で、それ以上の変態じみた「なにか」が描かれているわけでもなく、空のプールに飛び込むマーガレット・クアリーぐらいか。時間軸は二章→一章→三章?
過去や夢を白黒で映すのはダサい。不穏を煽るような音楽もうるさい。ヨルゴス・ランティモスとエマ・ストーンは組んで四作目だが、相性はそれほど良くないと思う。