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花子 4Kのyskdのレビュー・感想・評価

花子 4K(2001年製作の映画)
4.5
[寓話のようなある家族の話]

知的障害を持つアーティストである今村花子とその一家の日常を描いたドキュメンタリーである。
ドキュメンタリーであるが、構成によって神秘的な魅力がある。

映画の冒頭、花子が絵画教室で油絵を描いている、というより、キャンバスに絵の具を叩きつけたり、引っ掻いたりしていると言ったほうがいいかもしれない。
実は花子は絵だけではなく、食べ物を使っても「作品」をつくっているという。

それは、ご飯やおかずなどを畳の上に、並べたり重ねたりしているのだが、母親は「面白いと思ったから写真に収めることにした。」という。しかし、父親は「なんでこんな汚いことをしているんだと思った。」という。
普通の感覚であれば、父親と同じ考えをもつだろうが、たしかに「アート」は、誰かが「アート」として認識しない限り、作品ではなく、ただの落書きやゴミであったりする。
芸術性を見出すことは、芸術の本質であると思う。
父親も母親もおしゃれだし、家庭内にも画集や大きなスピーカーなどがあり、芸術に元々興味や関心があったのだと思う。

常に画面にうつされるのは父、母、花子なので、3人家族なのか、と思っていると、チェロを演奏している後ろ姿で、花子の姉の桃子の存在が明かされる。

桃子は子供の頃から、かまってもらいたい花子に勉強の邪魔をされたり、教科書を破られたり、時には怒鳴られたりと、それまでかなり大変な思いをしてきているようだった。
だからすでに離れて暮らしているのかと思いきや花子の部屋(家の2階)の隣の部屋にいるのだが、その姿はチェロを弾く後ろ姿か、すりガラスごしに緑色のパジャマを着ている姿が見えて示される程度である。

彼女は花子を中心にして回る家族を俯瞰的にみており、この物語のナレーターとして、それぞれの人物について語る。
つまり、1階の食卓で3人が集まっている時、2階にはそれを俯瞰して見ている「超越的な存在」がいるのだ。

これがこの映画の肝であり、その構成によって、神秘さが生まれていると思った。

その後、桃子は家を出ようと思っているのだと明かす。自分は風のように近づいたり、離れたりして、家族と付き合っていきたい、と。

1階のリビングで泣き叫び頭を打ちつける花子がいる。おそらく桃子が出て行ったのだろう。
そしてカメラは2階へと登り、花子の部屋で三味線を弾いている父親がうつされる。
彼はまだ定年後の趣味として始めたばかりだろうから、その演奏や扱いがどことなくぎこちない。
桃子は父親とはあまり会話がないとも語っていたが、その父親が絵や彫刻ではなく、音楽をしているのは、なにか思いがあったのだろうか…。
そして、桃子の演奏していたチェロ(4弦)→父親の三味線(3弦)というのも映画的だし、この映画がドキュメントとして存在していることが奇跡なのではないか…。
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