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阿賀に生きるのyskdのレビュー・感想・評価

阿賀に生きる(1992年製作の映画)
4.0
[そこに生きる人の記録]

新潟県にある阿賀野川に住む農家や漁師、舟大工をおったドキュメンタリーである。
そこに住む人々は、時代によってテクノロジーを取り入れつつも、同じような生活を何世紀もしてきたのだと思わせる。

一方で彼らの多くは新潟水俣病の未認定患者であり、水銀を排出した昭和電工をあいてどった訴訟もうつされるし、また地域の過疎化、大型ダムの建設による環境破壊など、近代化や高度経済成長期の負の側面もみられる。
通常、ドキュメンタリーの映画であれば、そのような社会的な問題を主題にするが、重くなってしまうかもしれないが、この映画はそのような感じがない。

それは佐藤真らがそこに住み、撮影しているからかもしれない。
彼らを水俣病の被害者としてではなく、人としてみて、その人の生活を写してる、という感じがする。
むしろ、その人柄や仕事が魅力的にみえてくるからこそ、公害に対しての怒りが湧いてくるように思える。

個人的に印象に残ったのは、舟大工の遠藤さんだった。
自身は親方のもとで16歳から6年間修行し、一人前になってからは50年間で200隻ほどの舟を作ったという。船頭たちは日本一の舟というが、時代の流れからか弟子もとらず、身体が思うように動かなくなったため、撮影の5年前に引退していたのだった。
ある船頭が、新しい舟を頼んでも作ってもらえないため、大工の棟梁と舟を解体して、再制作をすることになった。しかし、気が変わったのか遠藤さんが棟梁を新弟子にして、作業をみてやるというのだ。
その時の遠藤さんの姿は、たしかに体は思うように動いていなさそうだが、その目や道具の扱い方は職人そのものだった。
舟が完成して、弟子が屋号をいれているところを見る、喜びと悔しさが滲む表情が忘れられない。
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