ちなこ

ANORA アノーラのちなこのレビュー・感想・評価

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)
4.7
ラストが圧巻だった⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝
切ない凄い(語彙力無し)
文学作品のよう。

NYのストリップダンサーのアニー(本名アノーラ)は、ロシア語が分かるという理由で担当した、ロシア大富豪のバカ息子イヴァンをエロエロでメロメロにしてしまう。

アニーを気に入ったイヴァンは、アニーにもっと一緒に爛れよう!と1週間のエロ恋人契約を持ちかける。
迸る若者の性欲!素直でよろしい。

日々の仕事に不満のあったアニーは、一週間の休みを伝えると、支配人に引き止められるが、
「社会保険も年金も雇用保険が無いのは嫌」
と、バカ息子の家(豪邸)に向かう。

エロ恋人が家にやってきた!ヤァヤァヤァ
R18映画なのね。
でも、エロエロな日々ではあるけど、絶妙に生々しくない。
むしろ、アニーの身体が美しくて良い。
あの、真昼間からリビングで、超短いスカートでストリップするシーンの、誘いっぷりいいねー( ˶'ᵕ'˶)و

バカ息子も、親の仕事を手伝えと言われていて、そろそろロシアに連れ返される。
最後の贅沢とばかりに、仲間も誘ってラスベガスで放蕩三昧する。
アメリカ最高!!*⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝*イェイ

ホテルの部屋で楽しい1日を振り返える。
もうすぐ終わっちゃう夢の生活。
まぁでもそんなもんよねと、バカ息子イヴァンと軽口を叩き合う。
と思いきや、イヴァンから突然の求婚。

(ヾノ・∀・`)イヤイヤ、有り得無いでしょ?

引かないバカ息子。
「本気なんだ!結婚しよう」

( ・᷄ㅂ・᷅ )どしたん?話聞こか?
愛とか無いでしょ。

「本気さ!2回いうよ結婚してほしい!」

、、、( •̅ ω •̅ )ワカッタ。結婚する。


∠(゚∀゚)/イヤッッホォォォオオォオウ!!
24時間チャペルがラスベガスにはあるんですね。
思い立ったらすぐ結婚。
おめでとうおめでとう👏👏
勢いで入籍を済ませる。

セックスワーカーから、富豪ワイフへのシンデレラストーリー!💎👸👡

それで終わるわけないのが、現代の物語。

ドタバタしているようで、ラストへの積み上げ方がめちゃくちゃ上手い。


以下ネタバレよー(´・×・`)











































物語は大まかに3部に分かれる。
トーンや色合いがまるで変わるのが、分かりやすい。

1部・バカ息子との出会いと入籍、その後の生活。

2部・バカ息子逃亡、捜索。

3部・結婚取り消し、エンディング

この物語は白人セックスワーカーの女性という、社会的に低い地位とされる者が、自分を守る盾や生存戦略として、契約や権利を正当に獲得したにも関わらず、
「持つ者」の力で、簡単に壊されてしまう社会を寓話のように描く。
更に、アメリカとロシア、アルメニア、国の関係も描くようだった。


1部ではシンデレラストーリーとして成り上がるアニー本人も、最初プロポーズを信じない。
金持ちのお遊びでそんな会話を沢山聞いて来たのだろう。
本気にして、裏切られるのは辛いから。
いつも軽く受け流せれるのは、職業ネーム「アニー」だから。
映画タイトルなのに、本名の「アノーラ」を使わない理由は、名前も盾で守ってるのだと思う。

バカ息子が自分を本気で愛してないんだろうとは思っている。
ロシアでの仕事が嫌で、結婚すればモラトリアム期間が延長されるから。。。
なのに、数日の夢の時間と、真剣な眼差し、、、。
結婚という契約書があるなら、、と、アノーラとして結婚をしてしまう。
4カラットの指輪💍も、ミンクより高い黒テンの毛皮のコートも、全部アノーラとして貰ったもの。
ラストの流れにこれが響く。


またアノーラの出自も気になった。
祖母がロシア人でロシア語を話す、、という話から、ロシア革命でアメリカに逃亡した、白系ロシア人なのでは無いのだろうか。
いわゆる、共産主義のアカに染まらなかったロシア人。
だから白。
革命に反対してロシアから亡命できた、それまでの支配層の貴族や知識人、軍人たち。。。
そう考えると、祖母は旧ロシア貴族だったのではないのだろうか。
ここまでロシア語が話すのはイマイチ苦手だが、ヒアリングは出来ることから、祖母の昔の話を聞いていたと思われるアノーラ。
バカ息子の家は、分かりやすい新興財閥のオリガルヒ。
そう考えると、ある意味、祖母が失った財産を取り返す物語にも見えてくる。


1部の幻想的なライティングの夢の世界から、日常がやってくる。
いつもバカ息子がゲームをしていると、アノーラは愛玩動物ヘッドロックをされ、すっぴんでつまらなそうな顔をしている。
今までのキラキラフィルターがオフ。


そこへやってくる両親の命を受けたお目付け役達。
「うちの大事なムッスコが娼婦に騙されて結婚しただなんて(゚皿゚#)」
お母様はカンカンよ!
なんとか離婚させなければ!!と息巻く3人のおっさん達。

ほぼパンイチで逃走する息子。
置いていかれるアノーラ。
身の危険と、御伽噺の終焉を嗅ぎつけ、大暴れする。
このシーンの迫力とFワード連発、人が話してるのにガンガン入り込んでくる話し方が壮絶すぎて、眉を顰めながら笑っちゃう。
人権に配慮して、暴力を使わず、という縛りプレイになると、女の方が手加減しない分タチが悪いなꉂꉂ(ˊᗜˋ*)

笑っちゃうけど、生きる権利を守るための闘争なのだよね。
口が大写しになり「レイプ」を連呼する様は、警報機であり、まさに女性の権力闘争なのだと思わされた。

赤ちゃんや女の人が泣き叫ぶのを耳障りに感じるのは、SOS発信力が強いからなんだなぁと思わされる。
咄嗟に出せるのが大事だね( ˊᵕˋ ;)
ビックリして声が出ない方なので、心構えとして叫べるようになりたい(脱線)


だが、このお目付け役がアルメニア人なのもキモなのかなぁと思う。
アルメニアはロシア帝国に征服されたが、ロシア革命で独立できたのに、ソビエト連邦の建国メンバーになった国。
アノーラの祖母とは逆なのだ。
そして今でも小間使いのようにロシア人に使われるアルメニア人達。


お目付け役達3人とアニーで、バカ息子捜索するのは、ちょっと凸凹ロードムービーみたいで楽しかった。
武闘派担当イゴールが、それまでは命令されるままに実行する暴力装置だったのに、だんだんアニーに感化されて行くのが良かった。

バカ息子イヴァンの逃亡は、最後の自由への逃亡ではあったとは思う。
自由の国アメリカだもの。
「グリーンカード、永住する為」とか大人達は訳知り顔で言うけど、そうじゃないように私は思う。
「自分で選んだ相手と結婚する」
その自由さを求めた求婚だったのだと思う。
極めて幼稚な逃走劇だったことは、言われなくてもわかってる。
泥酔しなきゃ向き合えない現実。


2部にはいると、コメディ要素も多いので、まだまだ夢の延長戦みたいな面白み。
アニーも、バカ息子を見つけて、本人から否定させれば勝てるっしょ!契約書もあるし!
アメリカの法律が個人の権利を守ってくれるという自信があった。

婚姻無効手続きには、婚姻した州じゃないとダメですー!も実にアメリカらしい。



そして両親渡米、3部開幕。
いきなりドキュメンタリーみたいな現実の色合いになる。
分かりやすい鉄の女みたいなマッマ登場。
ムッスコちゃん泥酔ながらも、マッマがくると、もうアノーラのことを見ない。

勇気をだしてマッマに挨拶するアノーラ。

「はじめまして、お会いできて嬉しいです。結婚しました。家族の一員になれて光栄です。」(•'-'•)モジモジ

ガン無視マッマ。J( 'ー`)し

「あの、はじめまして?」引かないアノーラ

J( 'ー`)し「結婚も、家族も認めてないし、娼婦が思い上がらないで。あとロシア語下手くそ!」

けんもほろろ。
まぁそうよね、、と思いつつ、そもそもショックを受けたのはロシア語下手くそ!だったようにも聞こえる。
もうアンタはアメリカ人でしょ!と言わんばかり。
この辺のアイデンティティ問題は、当事者ではないと完全には分かりきれないとは思う。
でもロシアへの思い入れはあったんじゃないのかな。


バカ息子はもう会話が出来ない。
契約社会のアメリカではなく、ロシア(家)のルールが絶対。
泥酔していたとしても、そこは間違えない。


プライベートジェットで離婚する為にベガスに向かう時、アルメニア人が富豪両親へ媚びへつらいに行くが、無視され続ける。

この辺も世界情勢映してるようにも思う。
アルメニアのロシア離れ、結構ニュースで言われてますよね。
EUに加盟したがってるアルメニア。
プライベートジェットの部屋の別れ方が、西側と東側を象徴するかのようだった。
年寄り世代は、未だにロシアを親密に見てるのに、イゴールのような若者はロシアに何も期待していない。
ただの御伽噺が崩壊する話ではないのも伝わる。


ベガスでの婚姻無効。
契約も力で無かったことにされる。
金持ちの力を持ってすれば、弱者が縋る正当性すらも握りつぶせる。
契約社会のアメリカ人のアニーとしては、この状況でチワワのような息子にも、腹が立つ。
アノーラとして向き合ったのにね。

このシーンの、用心棒イゴールが息子に放った一言が感慨深い。

「息子は彼女に謝るべきだ」

イゴールはアノーラとしての自分を見てたことに気がつくが、俯いたままのバカ息子。

J( 'ー`)し「息子は謝罪をしないのよ」

ロシアおかん!(#゚Д゚)
これがロシアの考えか!!という縮図を見せられてるよう。
アニーに戻るから、貰ったコートやスカーフを突き返す。
爆笑ロシアパパ。(σᵔꚈᵔ)σ
面白い見世物だったな!位の感想なんだろうな。
こっちは人生をかけてるのに。



明日の朝までいて良しという、バカ息子の家でイゴールとの夜。
アニーの人生で、男は2種類しか居ない。
女をレイプする男か、同性愛者か。
その二種類しか知らないアニーの今までの人生。
それでも力強く生きてきたことを誇るからこそ、イゴールはゲイと連呼する。


そして元の生活に帰る日がやってくる。
朝から雪が降り、今までの世界も全てなかったかのように真っ白になる。
住んでいた家の前まで来る。🚗³₃
車を降りたら、アニーとして、またストリップダンサーへ戻る、その一瞬手前。

イゴールはあの4カラットの指輪💍をこっそり奪い返していて、アノーラに差し出す。
イゴールはアノーラが周りの大人が言うよな、金目当てだけでは無かったことを理解している。
アノーラとして純情も捧げてたことを。


新婚旅行はディズニーワールドに行きたい、そんなピュアな少女のアノーラをイゴールは見つけ、
アノーラも暴力装置だけではない、おばあちゃん想いのイゴールのことを見ていた。


もうアニーに戻る時間。
ガラスの靴はない。
アニーとして出来ること。
身体でイゴールに御奉仕することが、自分の存在価値なんだと、上に乗るアニー。

でも、、どうしてもアノーラの自分が、2種類だけじゃない男としてのイゴールを認識してしまう、嗚咽。
響くワイパーの音。
白くアニーに塗り替えたいのに、ワイパーがもう一度アノーラを垣間見せるかのよう。

ワイパーの音が響く中のエンドロールは、ひたすら切なく、美しかった。

キラキラ、暴力ラリパッパ、アメリカの貧困と金持ちの格差映画かと思ったら、
とんでもない後味を残す映画だった。
まさに鴎外の舞姫かのような文学の香り。
素晴らしい✨

なんちゃってシンデレラストーリーからサスペンスみたいな予告は間違っている( ´ㅁ` ;)
それだけ助走が長すぎるのもあったけど、、。
もう少し短くできる気もしつつ、ゴージャスな世界を夢みたいのもわかる(´∀`)


そして、ついいい映画だと長くなりがち。
反省(´๑•_•๑)



追記3月3日

アカデミー五冠🏅
文字数は嘘つかない!ꉂꉂ(ˊᗜˋ*)
ちなこ

ちなこ