ちなこ

幸福なラザロのちなこのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
3.8
イタリア映画。「ラザロ」という名前で、何を意味するか知っているかどうかで感想が変わりそうな映画。

前提として、聖書の「復活のラザロ」と「金持ちとラザロ」の話を抑えておきたいところ。
( `ᾥ´)つ· ̫・˘ )͟͟͞͞=グググ

前者「復活のラザロ」はイエス・キリストが神の奇跡として、死後四日経過したラザロを生き返らせた聖書の話である。
神を信じる人は、死をも乗り越えられたという、キリスト教的には有名なラザロ。

「ラザロ出てきなさい」
と言われ、墓から飛び出すラザロは、想像すると少しコントっぽく感じるのは、私の心がきっとひねているからψ(⃔ ॑꒳ ॑*)⃕ψ↝
海外では、復活の代名詞なので、医学用語や生物学用語としても、ラザロの名前を冠する語句があるくらい。
(脳死患者の自発動作や、絶滅種の再発見)

日本で言うとなんだろうね🤔
弁慶の「立ち往生」とか、、復活はしてないか、。弁慶は泣き所のが有名だし。
仏教の考え方は生々流転なので、あんまり復活を重要視しないのかしら。
この辺は欧米との考えの違いあるなと思う。
神道のイザナギイザナミも復活失敗例だろうし。
復活するのはなんだか縁起悪い系😨

脱線しました(´>∀<`)


もうひとつのラザロは、キリストがする例え話にでてくる「金持ちとラザロ」。
復活したのとは別のラザロさん。
貧しく出来物だらけで路上生活者のラザロは、ユダヤ教の金持ちの家の前で残飯を貰うために座り込んでいる。
そんなラザロに関心を持たない金持ち達。
唯一、犬だけが、ラザロの身体の病気を舐めてくれる。
ラザロはその後死に天国へ行き、金持ちは地獄で拷問に合いましたとさ。

基本的に、キリスト教は富と神の相性が最悪なのである。
「金持ちが天国に行くのはラクダが針の穴を通るより難しい🐫🪡」
資本主義全否定!!
ユダヤ教の頑張って富を貯めましょう!の教えの方が、資本主義で強いのがよくわかる。

とはいえ、為政者が非支配者層を大人しくさせるのに、宗教を使うという手口は、作中でも醜悪に描かれていた。
そういうシステムでもあるのよね。
キリスト教。


どちらのラザロも、有名な絵画のモチーフになっている。
日本人が、そんなに詳しくは無いかもだけど、ぼんやり「天上天我唯我独尊と言った赤子」や「ヤマタノオロチを倒した王子」くらい、まぁ知ってるよね的、存在のラザロ。


欧米としては、「あー、ラザロねー」な感じで公開されたのだろうと想像はする。


物語は、イタリアの小さな村が舞台となる。
公爵家の小作人として働く村人たち。
村の主な産業はタバコと豆の生産。
その生産物を領主に献上しなければいけないので、皆とても貧しく、裸電球ひとつを交換で使っていたり、ちょびっとのワインを回し飲みをして、ささやかな喜びも見出す暮らし。

ラザロはその村の青年。
懸命に働き、文句を言わず、決して怒らず、穏やかな笑顔を浮かべる彼のことを、村人は便利に使い倒す。
領主から搾取される村人たちは、ラザロを搾取する。
“弱いもの達が夕暮れ、さらに弱い者を叩く~“みたいな感じ。

古き良き時代だからって清貧なんてない。
善人は損、馬鹿を見る、と描くようだ。


だが、領主の使いが村の生産品を取りに来る辺りで、なんだか違和感、、。
使いの者の身なりや、携帯で会話している様子から、1990年代以降と想像できる。

日本では1947年の農地改革で廃止された小作人制度。
イタリアは、南側の貧困問題も抱えていたせいで小作人廃止は遅く、1982年まで続いていた。

今作は実際にあった領主の詐欺事件をエッセンスにしている。
実際は、この作中のようなお代官様の厳しい取り立てではなく、1960年代ですら、農民が7割とれたそうなので、作品は苛烈な味付けはされている。
村人たちは、資本主義社会から隔離され、搾取され続け、外部の情報を遮断され続け、古いイタリアの象徴としても描かれる。

とはいえ、北朝鮮や、新疆ウイグル地区を想像させれる設定ね( ˊᵕˋ ;)



その後、世界の本当の姿をしってしまう村人たちとラザロ。

古い村と現代社会、両方のラザロの存在。
聖人が必要な社会はあるのだろうか?


今作はこういうことなんですよ、という明確な説明が出来るわけではなく、もし聖人として降り立ったこの世界に何を思うのかのシミュレーション映画だとおもった。

きっと実は私の周りにラザロがいるのかもしれない。
そう考えて善く在りたいと想う( 'ㅅ')



以下ちょっとネタバレ(´・×・`)


























仮に、崖から落ちた段階で、ラザロ本体は死亡したとするならば、
資本主義社会を見ることなく死んだラザロは、正に「幸福なラザロ」だったのだろうかと思うと、めちゃくちゃ皮肉( ˊᵕˋ ;)

欧米のラザロは「復活して当たり前」先入観を逆手に取ってそう。

金持ちとラザロの話から、ラザロの死体に狼(犬)がペロペロしに来るけど、ラストシーンでもう一度狼になることを考えると、ラザロの死体に狼が宿ってただけにも見えるし。

ラザロは資本主義を見ずに死ねたんだ!
幸せ!幸せ!! ( ˙ཫ˙ )

狼と、宗教や神様。
どっちも現代では絶滅していくのかしらね。
ちなこ

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