最高。面白過ぎる。ハイスピードな編集で幸福な乱痴気騒ぎを切り取る前半から、後半からは奇妙なロードムービーのようになり、ジャンルがスライドしていく構成が鮮やかで、ショーン・ベイカーの作品の中でも比較的長尺だが全く飽きさせない。アノーラがチンピラたちから逃げようとする所のドタバタしたギャグや、お菓子屋の店主への絶妙なタイミングで挟み込まれるズーム、ポップな音楽使いなどショーン・ベイカーらしい演出も健在で爆笑できる場面が満載だが、その果てに訪れるラストの叙情性には思った以上に胸を打たれた。脇役に至るまでマトモな人間は1人も出てこないが、全員物語の装置ではなく、生きた人間として感じさせてくれるところがベイカーの好きな所。こういう映画をもっと見たい。