朝田

あの歌を憶えているの朝田のレビュー・感想・評価

あの歌を憶えている(2023年製作の映画)
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過去のトラウマに囚われた人の話を回想シーンを一切使わずに語るミシェル・フランコの作家としての技量に唸る。潔い省略が生み出すドライで無駄の無い語り口、要所要所で用いられるさり気なく効果的な長回しが見事。とりわけ終盤の家族間の断絶が決定的なものになる瞬間をワンカットで見せてしまう演出が残酷で凄まじい。ジェシカ・チャスティンとピーター・サースガードの関係性の映し方も巧みで前半部では表情を見せず足元だけを映したり、何を映し映さないかの演出が研ぎ澄まされている。やはりミシェル・フランコらしいヘヴィなものを突き付けてくるドラマではあるが、過去作に比べると人物を眺める眼差しに暖かさも感じる所が新境地だと思った。
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