藍紺

ANORA アノーラの藍紺のレビュー・感想・評価

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)
4.1
ストリップダンサーが御曹司に見初められ専属契約、アノーラが掴んだシンデレラの座。底辺からやっと抜け出せたと思いきや、立ちはだかる大富豪一族の壁。

アノーラを演じたマイキー・マディソン、素晴らしかった。「彼女にとって一生に一度の役だった」とはイザベル・ユペール評ですが、私も同感です。とびっきりセクシーでタフで客が何を望んでいるかを瞬時に見極めることに長けた売れっ子ダンサー。アノーラが強かで人を見ているのは彼女の表情からも読み取れる。視線や僅かな目の動きなど繊細な演技も見事だった。

ショーン・ベイカー監督の作品では社会の最下層でもがいている人々、主に性従事者たちが描かれてきた。今回はそこに大富豪を登場させている訳だが、両者の間には越えられない分かり合えない大きくて深い溝がある。そもそも議論の相手としてリングにも上がらせてはくれない現実。

アノーラは誰にも頼らず文字通り身体で稼ぎ、自分の意思も貫くことが出来る人間だったけど、ちょっぴり夢を見た。人生一発逆転できるかもしれない、と。年金も社会保障もないセックスワーカーから足を洗えるかもしれない、と。それを誰が悪く言えようか。




(ここからは鑑賞後に見て下さい)

ラストは人によって捉え方が変わりそう。良くしてくれた相手にお礼的な行為だったのか、はたまた天邪鬼なアノーラにとっては言葉で言うより行為の方がスムーズだったのか。自分は愛からの行為ではないと思ったが、イゴールは違う受け取り方をしてしまったのか。彼女の悲痛な慟哭がとても悲しいし切なくやるせない。でもその後イゴールがとった行動には少し救われた。
ショーン・ベイカー監督のやろうとしていることは支持したいのだけど、時折危なっかしい所も多々あると感じる。いくら強くてしっかりしてる女性であっても、肉体的にも弱く社会的弱者である場合は搾取される側であり、今作のラストでも結局アノーラは搾取されて、唯一の理解者だと思ってたイゴールは搾取する側になっちゃう。私はここに引っかかってしまった。ありがちなステレオタイプのセックスワーカーっぽくないかな?役者陣は本当に良かったんだけど、この一点が残念だった。

冬のコニーアイランドを歩く四人組とか良かったな〜。ロケーションが素晴らしかった!特に好きだったのは雪が降りしきるブルックリンの豪邸、ガラス張りの窓際から外を眺めるアノーラの背中!!!!!グッときてしまったよ。

あと大好きなユーリー・ボリソフはやっぱりカッコよかった。めっちゃ余談だが、アカデミー賞ノミネート発表瞬間の動画良かったねー。美しい奥様、天使の様なお子様たちと喜んでるのめちゃくちゃ嬉しかった!
藍紺

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