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エミリア・ペレスのるのネタバレレビュー・内容・結末

エミリア・ペレス(2024年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

世の中知らない方が幸せなことの方がたくさんあることと、人の根底はそう簡単には変えられないということを改めて示されたような気分になったな

エミリアは全然マニタスを引きずってる
多分エミリアとしての行いたちは、マニタスが子供の頃から憧れていた女性像なんだろうけど、本当の自分を隠して生きていくしかないからと周りに合わせ、それ以上の振る舞いをして生きてきた時に染みついた暴力性や支配欲みたいなものは中々拭い切れるものじゃないんだよなあ

エミリア本当ずるいなって思う
ジェシーが自分のことをマニタスだと知らないのをいいことに、マニタスとの結婚生活について聞くのってフェアじゃなくない?
更に最後の最後に自分がマニタスだってジェシーに伝えるのもひどいよ
自分は抱えてたものぶち撒けてスッキリするだろうけど、それを聞かされた側のジェシーはどんな思いをするかとか、どれだけ自分の都合でジェシーや子供達を振り回してるかとか考えたことないのかな
全てを手放す覚悟で自分の理想を貫いたくせに、結局欲しいものはどんな手を使ってでも自分の手元に置いておこうとする傲慢さと強欲さは正しく麻薬王マニタスそのものじゃない?
せめて秘密だけは墓まで持っていけよ
自分の理想とする体を手に入れるために莫大な資金と時間を要さなければならなかったこと、自分の本当の気持ちを表に出せない環境を強いられてきたことに同情はするけど、終始エミリアに対して好意的な感情になれずにモヤった

男の肉体を捨てるために家族を手放すつもりだったならはなから子供作るなよ、どうしても諦めきれないなら子供が独り立ちするまで待てよ、どちらも無理なら男として生きていくことに腹括れよって思っちゃったね

リタの人生も200万ドルで大きく変わったけど、自分の好きなことをやれてたのはせいぜい4年くらいで、あとはエミリアの近くで仕事を続け、ロンドンでやってた仕事とは離れて恋愛も結局出来ずじまい、銃撃戦に巻き込まれたり、かなりエミリア中心の人生になってた印象
彼女たちの友情は素敵だと思うけど、元から持ってた側のエミリアと、そんなエミリアによって持たされたリタって時点で上下関係が発生してしまってる感じがある

ジェシーもたくさん自由に使えるお金があって幸せかと思いきや「あいつの奴隷」って歌うくらいには支配されてる感覚を強く持ってたみたいだし
そんなマニタスの支配欲を良く分かってるからこそ、別の好きな男がいても駆け落ちなんてせず、ちゃんとマニタスが死んだ後に行動したのに結局エミリアはマニタス的暴力行為を行使してるから、何も変わってないんだよね
自分はエミリアという新しい人間に変わってエピファニアという新たなパートナーを見つけておきながら、ジェシーと子供達をそばに置き続けたいなんて身勝手すぎると思うんだよねえ

まじでエミリアの愚痴しか出てこないんだけど、出てくる女たちがみんなエミリアのために存在させられてる感が強い気がして、まさに「エミリア・ペレスの作品」って思っちゃった
まあ人間の欲求は理屈じゃどうにもできないし、弁えろ自重しろなどと思うわたしの方がまだまだなのかもしれないけど

最近観たミュージカル系だとウィキッドの印象が強いんだけど、それとは全く違う系統のミュージカルだった
環境音がリズムに変わってセリフが歌詞になっていくグラデーションみたいなのは聴いてて気持ち良かった
話すように歌う感じが多い作品
特に赤いベロアのスーツ着て卓の上でリタが歌うel malがかっこよくて好き

セレーナ・ゴメスの曲はrevivalってアルバム辺りが1番馴染み深いから、その時の印象とは全然違う歌唱シーンでわたしには新鮮だった

どういう展開になるんだろうって先が読めないから退屈はしなかったけど、あまり刺さる作品ではなかったかな
リタはエミリア亡き後自由に生きていって欲しいなって思ったけど、エミリアとジェシーの子供を預かるって決めてたから結局どこまでいってもエミリアとの繋がりは消えなさそうだね
情に厚い女だな〜
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