愛おしいか憎らしいかでこの映画の評価は変わってくる。副題をつけるなら、「その男、凶暴につき」ならぬ「その女、凶暴につき」という方が相応しいか。
主人公はカナという21歳の女性だ。日本と中国のミックスルーツで脱毛サロンで働いている。仕事は卒なくこなしているが私生活は奔放だ。優しいが退屈なホンダと自信家で刺激的なハヤシの間を行き来するカナ。やがて、カナはホンダを捨てて、ハヤシとの同棲を始める……。
カナの瞳は虚無感に満ちている。カフェで同級生が自殺した話を聞きながら、男たちの卑猥な会話を聞いている。ハヤシの家族とバーベキューをしていても会話についていけず、心と肉体を持て余す。カナの精神は着地点を失い、平衡を保てず、怒りを剥き出しにする。その矛先はハヤシへと向けられる。室内で罵声を浴びせ、乱闘を繰り広げていく。カナの言動はハヤシだけでなく、観客も振り回される。
この映画に成長や克服といった類は見当たらない。あるのは剥き出しの人間性。山中瑤子監督はジョン・カサヴェテスの映画を意識していたのだろうか。だとすると、カナの姿は『こわれゆく女』のジーナ・ローランズか。正直、私は苦手意識を持ってしまった。渋谷采郁や唐田えりかの姿にも注目してほしい。