主人公の朔也は何処かぎこちない。激変している社会に戸惑っているようにも見える。最愛の母が自由死を選択したと聞かされ、ロボット化の波で勤務先の工場は閉鎖。幼馴染である岸谷の紹介により、「リアル・アバター 」という仕事を始める。「リアル・アバター 」とは、依頼主の目となり耳となって行動する業務だ。言うなれば代理人だ。その風貌はUberEatsに近い。
朔也は自由死を選択した母の本心を探ろうと母の「VF(ヴァーチャル・フィギュア)」の開発を野崎という男に依頼する。VFは仮想空間上の人間で所謂AIだ。朔也は母の同僚で友人だった三好彩花に遭遇。台風で避難生活を送っている彩花に朔也は同居を提案する。彩花は元セックスワーカーで、男に暴力を振るわれたことで身体に触られるのを嫌がる。
「リアル・アバター 」と同様に朔也は母の代理をVFに求める。だが、満足しきれずに彩花にその役を求める。彩花は朔也が高校を退学する原因になった同級生にも面影が重なる。しかし、朔也は仮想空間の母や彩花に触れ合うことができない。
自由死やAI、格差の問題が詰め込まれているが全体的に議論されてないのが私には物足りない気がした。また、朔也の母が自由死を選択した本心について帰着点が見えない。情報量が多く、説明的な要素を排除しようとして中途半端な形になってしまったのがこの映画の弱点だ。