何がすごいって、個性的な登場人物やアクションの凄まじさに加えて、人間の内面を描いた青春劇なんですよ、この映画は。阪元裕吾天才かよ(呼び捨て御免)。
ちさまひを筆頭に協会の面々、強敵など、登場人物の魅力が『べびわる』の特長。今回の池松壮亮さん演じる冬村かえでも、そのひとり。根暗でコミュ障でひとりぼっちの野良の殺し屋かえで。本人は仲間や友だちが欲しい寂しがりやなので、だいぶこじらせている。そのあたりの心模様が、物語に深みを与えている。
少し話がずれるけど、昨今のトレンドは「ヴィランにも理由や背景があるんですよ」というやつ。そこをやたらと粒立てて、感動ポルノを押し付けてくる作品が多い。ちと冷める。
本作はその塩梅がとても良い。決着の時、かわいそうとか悲しいとかよりも、ほうっと息をついて「お疲れさま」と声をかけてあげたくなる。
変かな……変かも。でも、そう思っちゃう。
前作の強敵ゆうりとまことの兄弟も、身勝手な理由でちさまひに襲いかかってくるのだけれど、なんだか憎めない。うっかり応援してしまいそうになる笑
なんで自分はそう思っちゃうのかな、と考えて気づいた。これは「青春」だからじゃないのか。高校生が野球やブラスバンドにアツく頑張っている、そんな風景を、兄弟やかえでに重ねてしまうからじゃないのか。
余談だけど自分は『ヒロアカ』が大好き。孫ほど年の離れた子どもたちが、ボロボロになって頑張っている。友情や恋愛模様もある。そういう作品が好きなんだ。青春が好きなんだ。
『ベイビーわるきゅーれ』には、青春がある。ハッキリ言って殺し屋なんてろくでもないけど笑、そこには確かに人間がいて、葛藤があってもがいてる。それが胸を撃つんだなぁ。
阪元裕吾監督が描きたいのは、それなのかもしれない。照れくさいから殺し屋や狂人の皮をかぶせているけど、青い心を持った人なのだろう。じゃなきゃ、こんな素敵な映画を作れないよな。次回作はまさにそれっぽい雰囲気だし。間違いない。
だいぶお疲れのようだけど、少し休んでまた『べびわる』撮ってほしいな。やめないでほしい。
最後にアクションのことを。
園村健介さん、今回も素晴らしいアクションを創造してくれた。見たこともないバトルに度肝を抜かれた。速すぎて何してるんだかわからないところもあったけど笑、スローで観直したい。
ちさと役の髙石あかりさん。前作までは、アクションは伊澤彩織さんの担当で、高石さんは別の役回りと思ってた。けれど今作では、目の覚めるようなアクションを披露。肉弾戦でもかなりの存在感を示しており、伊澤さんがビーストなら高石さんはしなやかな獣として、作品を盛り上げてくれていた。誤解なら申し訳ないのだが、かなり訓練を積まれたのではないか。この作品にかける思いが伝わってきて、胸が熱くなった。
日本のカルチャーと、ハリウッドや香港にも引けを取らないアクションが盛り盛りの『ベイビーわるきゅーれ』は、絶対に世界で受け入れられる。映画好きならハリウッド版ができる前に観といたほうがいいよ!