りょう

ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズのりょうのレビュー・感想・評価

4.8
 このシリーズのファンというバイアスがなくとも、噂どおりの傑作でした。もう1回観たいです。
 映画がダークな作風にイメージチェンジすることは、ハリウッドのヒットシリーズにありがちですが、それがわざとらしくないところが好印象で、ちゃんとコメディ要素やダラダラした雰囲気が残っていて安心しました。個人的には笑ってしまうポイントが何回かありましたが、ほぼ満員の客席の反応はイマイチでした。おとなしい客層だったのか、序盤のバトルで前作までと違う気配を感じたのか…、ちょっと理由はわかりません。
 前田敦子さんが演じた入鹿が仕事にマジメというか、ちょいキレ気味な態度でありつつ、微妙にズレた言動をくり返すところがツボでした。彼女の役柄はアクションで魅せるタイプではなかったので、ちさととまひろのキャラクターとのギャップがいいバランスです。“灰原哀”ネタのところは妙な納得感がありました。
 池松壮亮さんは、この作品の中核としてすさまじい存在感でした。ちょっと主役を食いぎみでしたが、暴力でしか自分を表現できないところがうまく演出されていました。彼も含めた暗殺者たちは、いろんな意味で“生きづらさ”を感じていることがこの作風で鮮明になっています。冬村を主役にしたスピンオフも観てみたいです。
 前2作と比較すると物語がしっかりと構成されていて、アクションも確実にアップグレードしていますが、このシリーズの特徴である脱力した雰囲気は失って欲しくないです。当然に4作目以降も制作されることを期待しますが、“マイナー作品なのにメジャー級”のようなポジションがファンとしてはうれしいかもしれません。壮絶なバトルで締めくくられたはずなのに、あんなにグダグダな焼肉屋のエンディングをもってくるなんて、普通の映画の構成ではあり得ません。それが妙に心地いいというところがこのシリーズのポイントです。白昼堂々の銃撃戦なのに警察がまったく登場しないという潔さも…。
 映画を観終えてしまってもロスを感じないのは、まだテレビシリーズが放映中というなんとも贅沢なシーズンだからです。2024年は間違いなく「ベイビーわるきゅーれ」が席巻した1年だったと言われていくことでしょう。
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