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狼の血族のくりふのレビュー・感想・評価

狼の血族(1984年製作の映画)
3.5
【赤ずきんちゃん夢で悶える】

1984年の赤ずきんちゃんは、ひたすら夢の中に溺れる。性への憧憬と恐怖。おとめの心、揺らぎながらの綱渡り。でも目覚めない。

これ、ニール・ジョーダンの美学というより、原作・共同脚本の、アンジェラ・カーターの世界観に依った映像化ではないでしょうか。作品を読んでいないので憶測ですが、映画には女性的な意思を感じます。

赤ずきんちゃんの欲望、おばあちゃんの性教育(笑)、人狼伝説の語り継ぎ、主にこれらが渾然一体となって語られますが、それが少女の夢という器で、ぼんやりとかき混ぜられて展開するので、かなり、とりとめなくも見えます。

さらにどうやら暗喩がテンコ盛り。で、性に纏わる符牒が散らされていても、上品な暗喩なので、机上の空エロス、みたい。もう、さっさと脱げよー(笑)。本作、主人公が少年だったら、オチは夢精で終わるような印象なのですが。

そんなこんなを掻い潜らねばならず、楽しむのに苦労しました(笑)。

ただ感覚的に受け取れる、という人には面白いのでしょうね。きちんと理解したい、という人には、前提に知識が要るように思います。やたら出る蛙は、避妊なさい! という警告(ペロー的指導)なのか? とか色々。

赤ずきんちゃんは意思的で、ぺローやグリム版からは進化してますね。自分の欲望に正直。シンボルであるずきんは最後に、そうしちゃいますか!その先で、とっととタブーの越境までしちゃうわけですね。

主演のサラちゃんも意思的な面構えなんですが、別の言い方では大根(苦笑)。揺らぎはまるで表現できていません。子供だから仕方ないですか。サラちゃん、この一作で消えちゃったみたいですね。

本作が作られた頃は、特殊効果が見世物でしたから、狼への変身が長い長い。あまりにくどくて、いま見ると「いやげ物」の域です。

あと狼の群れが、顔を黒く塗ったお犬さんたちに見えたのですが、気のせいでしょうか。

イメージの噴出として面白かったのは「ミルクから生首」と「裸の狼少女」。後者は挿話としてもよかった。あの娘、飼いたい!(最後にマチズモ発言)

<2012.1.6記>
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