冒頭、三姉妹の登場シーンで古川琴音に似た女子がいるなあ、と思っているとすぐにタイトルロールで本人と分かった。ついこの間の『言えない秘密』とお顔の雰囲気が違うなあと思って観ていたんですけど、化粧で雰囲気は大きく変わるものなのですね。で、本作の古川琴音を観ていたら何やら知っている女子の面影を感じてしまった。10歳ほど年下でわたしのいた部署に配属されてきたのです。営業部だったわたしが帰社したら片付けようと思っていた事務が、帰社したら出来上がっていたのであれ、と思っていたら、その彼女が、お客様から問い合わせが来たのでやっておきましたけど、大変だったんですよ、もう大雑把なO型なんだからあ!とプリプリしていたのです。その後も緊急性の高くなさそうな事務を放っておくと出来上がっていて、こりゃ楽だと思ったものです。今度飲みに連れてってくださいね、と言うので、といってもふたりっきりで行っても間が持たないだろうと、後輩男子に、仕事終わったら来てよと声を掛けておいたのです。しばらくすると後輩男子がやって来たのですが、え~、何であなたが来るのよ、と後輩男子にブツブツ言っておりますと、後輩もだからイヤなんだよな~、と返したりして和気藹々としたフリをしたものです。結局、今度はふたりっきりですよ!と念を押される羽目になるのですが、女子が男を呑みに誘うってことはALL OKってことなんだよ、といじわるを言うと、え~~と妖しく驚いて、その後ふたりがどうなったのかは、勿論、大人の秘密ですよ。
大人の秘密といえば、本作のメイン男子/青山フォール勝ちの秘密が泣かせます。
三姉妹/江口のりこ、内田慈、古川琴音が温泉旅館を予約して母親の誕生日をお祝いしようとあれやこれや企画しているのですけれどなかなかにきつめの母親らしく、三人の娘は往生しています。尤も三姉妹もその血を引いているのかかしましい。いつもこうなんだろうかとうんざりするほどに罵り合いが続きます。そんな中に何故青山フォール勝ちがいるのかというと、古川琴音がその場を借りて彼との婚約の発表をしてお母さんに喜んでもらおうとひとり画策して呼んでいたのです。え~聞いてない、と姉ふたりにぞんざいに扱われている青山フォール勝ちですが持ち前の能天気のフリでやり過ごしているのです。が、先に古川琴音の方がブチ切れして旅館を飛び出してしまいます。青山フォール勝ちは仕方なく自家用の小型トラックに古川琴音を乗せるのですが、姉ふたりを呪詛して黙り込む彼女の横顔をチラチラと盗み見てかんがえます。不意に小型トラックを止める。/どうしたの?/しょんべん。/やれやれと古川琴音も外に出てスマホをいじくっている。頃合いを見計らって青山フォール勝ちは彼女に近付き話しかける。このまま暗い夜道を真っすぐに向かったらキミは後悔する。それは間違いない。真っ暗な夜にかんがえることは大抵は間違っている。かんがえるならお天道様の下でかんがえようよ。
そうやって旅館に戻って来たものの、ひょんなことから古川琴音は青山フォール勝ちの個人的事情を口汚く罵ってしまう。黙り込んで立ちすくんでしまった青山フォール勝ちなんですが、不意に何も言わず急ぎ足で外に出て行ってしまいます。あ、あ、あ、言っちゃいけないこと言ってしまった。姉ふたりは追いかけなくていの?と促しますが、あんなこと言っちゃったら無理。古川琴音は、布団被って泣きじゃくります。
次の朝、三姉妹で温泉につかっていると青山フォール勝ちが屈託なく旅館に戻って来て、古川琴音に元気よくおはようと声を掛けます。/え、怒ってないの?/何を?/昨日の夜酷いこと言っちゃって。/何だっけ?/覚えてないの?/うん。/だって、黙って出て行っちゃったから。/怒り始めたからとりあえず部屋から出ようと思って。/どこで寝たの?/軽トラで。/
そんなわけないじゃない。これが大人の秘密の使い方ですわ。
そんな映画です。