なるほど、片山慎三監督「ガンニバル」の成果をこのような形で…。凡ゆるジャンルを横断する作品になっているので、世界市場に向けての顔見せとしては適切だし、その手腕たるや間違いないのだが、いかんせんテーマと展開が…。つげ義春原作の実写化としては良いかもしれない。
とは言え、アリ・アスターにとっての「ボー…」、ランティモスにとっての「憐れみの3章」だと思えば、全然マシな方。これだけ好き放題できるメジャー作家が、久々に日本から出て来たという点でも嬉しい。ただ、どうしても園子温とか良くなかった時の邦画のテイストが頭を過ぎって肯定的に捉えにくい。
『岬の兄弟』『さがす』からは扱うジャンルも大きく広がり、『さまよう刃』『ガンニバル』からは映画の技術も大きく向上し…と、片山慎三監督のステップアップとしては適した原作なので、この企画を通した製作陣とタイミングは素晴らしい。戦争映画を、日本であの規模で描けるのも今しか無いかも。
全体に、呆気に取られる展開の連続だったけど、終盤の義男が福子を探して、文字通り、駆けずり回るシーン(それまでの映画で描かれていた/義男の漫画で描かれてきた舞台が背景に)は、理由もわからず泣きかけた。あのカラーと白黒が混ざる感じは映画ならでは。ただ、オチの福子ドン、ポーンは…。