つげ義春の短編「雨の中の欲情」の不条理でエロティックで情景で始まり、ノスタルジックで国籍があいまいな街で男女3人の三角関係が始まる。無謀な儲け話で散々周りを振り回して一人の男が姿を消した事により、性と生と死がとりとめもなく浮遊するような展開が始まる。ブツを受け渡すために国境を越えた先のジブリ映画のような海、凄惨を極める戦場、童話みたいな穏やかな生活、まるで覚めてはまた眠る境界がぼやけた夢みたいだった。
どこか懐かしくて情緒ある台湾の風景と繰り返されるヌード描写はつげ義春の世界観のようではあるけれど、猥雑さがあまりなくスッキリし過ぎている気がした。そしてキレイだけど散漫なイメージは味わいが無かった。視覚より権力を持つ音楽はストリングスとピアノで雑味のない感傷を誘い、さらに味気をなくしていた。