このレビューはネタバレを含みます
主人公イ・シネは五度生まれ変わる。
一度目は夫を事故で亡くして小さな息子と知り合いもいない夫の故郷の密陽市に引っ越して新たな人生を始めた時。
二度目は密陽市の生活が落ち着き始めてすぐに最愛のモノを亡くした時。
三度目は悲しみの中で慈悲深い父なる神の教えに出会った時。
四度目は心のキズを癒してくれた父なる神に不信を感じた時。
五度目は暴走する父なるモノへの憎悪がグロテスクに弾けた時。
心のキズを乗り越えるために生まれ変わるようにあがくイ・シネを悲しみと狂気にどんどん取り憑かれてゆく表情で演じたチョン・ドヨンの演技は圧巻で、静と動を高速で行き来してイ・シネという女性を刻み込むように存在させていた。
ガサツな男性性の塊でイ・シネにさんざん嫌われながらも変わらず支え続けるジョン・チャンを演じるソン・ガンホも当然素晴らしい。
劇的な悲劇の先にささやかな温もりがあるラストの余韻。映画が映すのは彼女の人生の切り抜きでこれからも彼女の人生は続き、そしてまた生まれ変わる。