ジェーン・バーキン×ミシェル・ピコリが送る袋小路&近親相姦一歩手前の父娘モノ ドワイヨン初めて観たけど家族という小宇宙の閉塞感や沸点の低さをドライかつ的確に描いててめちゃ推せる 精神不安定な娘が夫との生活から逃れるように逃げ込む実家が最近買って引っ越したばかりの海の見える邸宅なのが「幼年期の廃墟」としての実家嫌さを引き算して真に人間関係だけを浮き上がらせていていい 父が不倫の恋をしていると知った翌日にはその不倫相手の女性をディナーに招くジェーン・バーキンの行動力(あるいは先の見通せない不安定さ)が物語を静かにでも力強く牽引していくので精神不安定な女性が主人公のわりにダレない 急に頭で皿を割ろうとしたり、急に父を持ち上げたり、急に頭突きしたりと先の読めないアクションがそれを要所要所で急加速させる
終盤になってジェーン・バーキンの父への依存は父が(おそらくより美しかったという理由で、無意識に)姉よりジェーン・バーキンを贔屓していたこと、いちばん近い同性の人間よりもわたしを愛してくれたいちばん最初の男としての寄りかかりだったことが示唆されて、そのリアルな説得力もよかった 期せずして『都会のひと部屋』に続くミシェル・ピコリ映画祭になってしまったけど、作中で大きな赤ん坊と表されるように、思慮深そうにしつつなにも考えてなさそうな、でもジェーン・バーキンのメンヘラ仕草に必ずなんらかのリアクションを取れる程度には分別のある父親がめちゃ上手だった ぱっと見にぜんぜんセクシーじゃないのもいい むき出しにしたお腹どうしをくっつけるやつも近親相姦のラインをギリ跨がないところにあるセックスってかんじでハラハラとよかった
姉の子どもが生まれ、精神不安定だった妹が不意に世界を肯定できるようになる、というのはバナナブレッドのプティングだなと思った 父を置き去りにして訪ねた病室で物語が閉じるのも正しい その穴が埋まりさえすればもう大丈夫なのだから