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トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦のKSatのレビュー・感想・評価

4.3
去年、香港旅行に行った時に九龍城の跡地に行ったのだが、話に聞いていたカオスな城砦はなく、めちゃ綺麗な公園と小さな無料の記念館になっていたこと、「クーロン」ではなく「ガウロン」か「カオルーン」と呼ばなければ香港の人には全く通じないことを知り、驚いた。

この映画は、そんな九龍城砦に逃げ込んだ青年が、城砦の中で暮らしていくうちに己の出自に纏わる秘密や陰謀に巻き込まれていく、、、

というストーリーこそあるが、もはやそんなものはどうでも良い。この映画の主役は、ドン引きするほどリアルに再現された九龍城砦だ。

しかも、ただリアルなだけではなく、人の動きに応じた設計がされている。人々は皆、城砦の中の室内を登ったり降りたりしながら、変化しようとしている。なんだか感動してしまった。

正直、アクション場面は面白いけどカットを割りすぎていて往年の香港映画のような驚きはなく、サモ・ハンとかルイス・クーの闘いは何を見せられているのかわからん感じが強かったが、それ故に若手の闘いも際立ち、世代交代の映画になっていた。ラストは、何だか凄く泣きそうになった。

あと、香港映画特有の、元の曲の歌詞や背景をガン無視して感覚的に使う意味不明な選曲センス(褒めてる)が光る、外連味溢れる映画でもあった。タランティーノは、こういう香港映画特有の選曲センスの影響を受けているのだと思う。

特に、主人公が九龍城砦で暮らし始めるモンタージュの中で流れるのが、あの『スノーマン』の中で使われる名曲「Walking in the Air」のインストゥルメンタルカバーだったのが、意味不明すぎて最高だった。雪要素が微塵もなく、空を飛ぶわけでもないのに、謎のミスマッチ。これだから、香港映画は素晴らしい。
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