blacknessfall

女囚さそり 第41雑居房のblacknessfallのレビュー・感想・評価

女囚さそり 第41雑居房(1972年製作の映画)
3.8
女囚さそりシリーズ2作目🦂🦂

今作も宿敵である刑務所所長にハードにいびられるさそり a.k.a. 松島ナミ
オープニングから足枷、後ろ手縛りで岩窟の岩肌に転がされてる。そしてそのまま放水の刑((゚□゚;))
このシーンのさそり a.k.a.梶芽衣子さん、素の表情で怖がって苦悶してるんだよ。そりゃそうだよね、こんなの東映でも川谷拓三さんぐらいしかやらないもの、、笑

前作でも梶芽衣子さん、かなり無体なめにあってて、降板したかったらしいけど、今回はおっぱい出さなくていいからと東映のゴリ押しに負けてしぶしぶ登板ってことで、梶芽衣子さんに無理させられないから、雑居房の女囚達との脱走劇になったらしい。

さそりを含む雑居房の7人とそれを追う刑務所警官達との追走劇。

梶芽衣子さんが乗り気じゃないから、それを補う形で脱獄の中で他の女囚達にスポット当て、前作でさそり一人に負わせていた国体や歴史の中で虐げられてきた女性の悲しみと怒りを他の女囚達にも負わせている。

さそりシリーズすごいのは虐げられる女性の復讐や怨念を画くことで男尊女卑の酷さ、それを機能的に温存させることで成り立ってる国体、要するに天皇制批判まで踏み込んでるとこなんだよ。
これは伊藤俊也監督のポリシーなんだろうな。

今作もそれが随所に炸裂してる。
潜伏先で出会った謎の老婆、このお婆さん、見た目からして山姥チックで不気味なのに「呪ってやるうううぅぅ」しか言わない狂女なんだよ
そんな彼女が突然、浪曲と言うか詩吟みたいな節回しで、各々の女囚が犯した罪を吟いだす。
これが全部、男絡みの殺し。強姦した父親を殺した、浮気相手を殺した、とか、みんな男に傷つけられたことが原因なんだよ。
このシーンかなりシュールでそして何ともおどろおどろしい。

このシーンだけじゃなくて、時々こういうシュールでありながらグロテスクなイメージ映像みたいなシーンが頻出する。
ホドロフスキーに血生臭い怪談を混ぜてたような何とも言えないテイストなんだよな。
女囚が観光客の男達に犯されて殺され川に投げ込まれた後に滝が真っ赤に染まったり。

かなりエキセントリックでショッキングなんだよな、撮り方が。
梶芽衣子さんの曲が流れてミュージックビデオみたいになったりするシーンが何回か挟み込まれる。
これもかなりグロテスクでダークなんだよ。
流れてる曲は違うんだけど、映像の質感だとゴシックメタルが合いそうな映像。

さそりのセリフが2つしかないから、彼女の感情を歌と映像で代弁させる演出なんだけど、あまりに独特。でもかっこいいんだよ。

監督はすごい気合い入ってるんだけど、肝心の梶芽衣子さんが乗り気じゃないから、パワーと狂気を補うために映像のテクニックを駆使してる気がした。
本当にどのシーンも鮮烈だから。

それとその狂気補い要因として、雑居房のリーダー的女囚の大場ひでの存在が大きい。
白石加代子さんて女優が演じてるんだけど、演技が物凄くエキセントリックなんだよね、映画ってよりアングラ劇みたいなオーバーアクトなんだよ。
常に力の入ったハウリングさせたような発声でエグいセリフを連発する。
「私は獣さ、逃げた旦那憎さに自分の子を水に浸けて殺しのさ!」と絶叫してギィーヒッヒッヒと高笑いするシーンは何回見ても怖い、ヒィーΣ(゚ロ゚ノ)ノってなる笑

ハッキリ言って白石加代子さんが主役状態なんだよな、中盤から。
脱走のイニシアチブも彼女だし。仲間の女囚を強姦して殺した観光客の男達のバスをジャックし、男達を全裸に剥いたリンチを煽動するし、警察のバリケードに怯まずバスを突進させて銃撃戦までやる。
その間、例の狂的なハイテンションな怪演だから彼女に釘付けで梶芽衣子さんの影が薄いんだよ笑

でも、この狂躁的でハイテンションな白石加代子さんのお陰でクールでローな梶芽衣子さんの魅力がより引き立ってる感じはした笑
影は薄くなっても魅力が消えてるわけじゃなくて、むしろ際立ってる!

何回観ても特濃で語りどころの多い映画だから感想もとっちらかってしまうな😂

今回の再見で強く思ったのは伊藤俊也監督の国家への怒りが凄まじいってこと。
特に日帝時代の罪を忘れようとしてる時代の風潮やそれを作り出してる国家に対するどす黒い情念のような怒りを感じた。

女囚達にジャックされる前の観光バスの中で、後に女囚を強姦して殺す若い男達に年配の男が戦争中に大陸(中国)で若い女を強姦した体験談をおもしろおかしく語る。
これを語る時の年配の男の何の罪の意識もなく自慢気な様子が醜悪だし、それを羨ましいと言って盛り上がる若い男達の様子も反吐が出そうになるほど下劣。

わざわざこういうシーンを入れたとこに伊藤俊也監督の思想性を感じた。
この凄惨な事実を風化させてなるものか、刻みつけてやる。
国家の"正義"への忠誠は人を狂わせ陰惨な事態を引き起こすんだと言いたいような。
そんな気が。
blacknessfall

blacknessfall