幼い頃に両親を亡くした瀬名垣一咲(福本莉子)は、瀬名垣組組長である祖父に引き取られ育った。極道一家の孫であるために孤立し、友達ができなかったトラウマから、高校入学を機に極道一家の孫であることを隠し、「普通の友達を作って、普通に恋をする!」と決意していた。ところが入学初日、瀬名垣組の若頭で、一咲の世話役でもある宇藤啓弥(ジェシー)が年齢を詐称して同じ高校に裏口入学し、一咲の「番犬」としてボディガードになると宣言する。漫画原作の物語は、リアリティ・ラインをひたすら無視して、キュンキュンするようなロマンチック・コメディに舵を切る。その対象となるのはSixTONESのジェシーである。20代半ばでありながら高校に裏口入学。せながきいさくと言う主人公の名前がそもそも少女漫画だが、彼女に言い寄ろうとする余計な虫たちをコテンパンにのして行く。ほとんどヤクザ映画のジャンル映画としての描写はなく、僅かにけつ持ちをするキャバクラのママ(佐々木希)と一咲との恋の鞘当てが出て来るのみ。
『恋は光』の小林啓一が得意とする学園群像劇だが、キャバクラのママと共に、ヒロインの恋路に待ち構えるのは瀬名垣組の兄弟分にあたる田貫組組長の孫・田貫幹男(櫻井海音)で、彼がいかにもなダメダメな倅を演じながら2人の仲を引き裂こうとする。ヒロインは一応、福本莉子なのだが、どこまでもSixTONESファンの為のジェシー映画でそれ以上でも以下でもない。ソフト・フォーカス気味な柳田裕男のカメラワークが肝で、小林啓一の演出はジェシーを正面からではなく、常に斜めから捉え、セクシーなジェシーの顎のラインを強調する。後半のシェークスピアの『ロミオとジュリエット』の上演はいかにも『ドライブ・マイ・カー』のようなメタ的な演出を取るかに思えたが劇中劇には向かわず、専らロミオとジュリエットの自分探しとすれ違い続ける四角関係ばかりで、恋愛映画としてはなかなかにタルい。まぁ暴対法以降のヒロインが若頭と恋仲になるはずがないし、裏口留学させようものなら警察が黙っていない。そうでなくても噂は飛び火し、誰も一咲を口説くはずもないのだがまぁそこは漫画原作だから、黙っているしかない。とにかく若頭で26歳の高校生を演じたSixTONESのジェシーのキザな優しさを楽しめる人は楽しんで下さい。小林啓一の演出は三池崇史のようなわざとらしさもやっつけの感覚もなく、構図が生真面目で活劇的なのも珍妙な作品。