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BETTER MAN/ベター・マンのnetfilmsのレビュー・感想・評価

BETTER MAN/ベター・マン(2024年製作の映画)
3.7
 あえて予告を観ない派というか、予告編でのネタバレを極力嫌うので今回も何の予習もナシに観に行ったのだが、まさかのロビー・ウィリアムズの半生にビックリした。ロビーと言えば90年代のUK最強のアイドル・グループTAKE THATの元メンバーで、90年代の人気絶頂の時期に突如脱退したと言われているが、事実上の戦力外通告で強制退場させられた印象がある。然しながら実際の人気はメイン・ボーカルのゲイリー・バーロウと人気を二分していた記憶がある。ゲイリー・バーロウがいわゆる正統派ヴォーカルなら、ロビー・ウィリアムズは無精髭も生やしたいわゆる不良フレイヴァ―で売っていた印象だが、こんなに破天荒な人物だったとは知らなかった。90年代のブリット・ポップと言えば、BlurとOASISがしのぎを削った時期で、他にもPULPやSuede、Radioheadなど伝説のバンドが多数登場した有り得ない時代だった。その中で前述のバンドと違和感なくチャート上位にいたのがTAKE THATだった。あえて申し上げればのちのBoyzoneやBackstreet Boysの大ヒットはTAKE THATなくしては有り得ない。New Kids On The Block以降、アイドル・グループは不毛の時代へ突入し、最も時代遅れのジャンルへとなり下がった。その状況を大英帝国から打破したのがTAKE THATだった。

 今作は『グレイテスト・ショーマン』の監督マイケル・グレイシーの7年ぶりの堂々たるミュージカル第2弾である。19世紀に活躍した興行師、P・T・バーナムの成功を描いたマイケル・グレイシーが今度は一転して、90年代のアイドルだったロビー・ウィリアムズの半生を描く。『グレイテスト・ショーマン』の監督だから、ミュージカル・パートはどれも圧巻の出来で素晴らしい。序盤のリージェント・ストリートのダンスシーンは背景の人数にも圧倒される凄味溢れる名場面で、『Rock DJ』が彩る。中盤のロマンティックな船上ダンスシーンもテクニカルなカメラの動きが巧みで、ドラマチックな恋の始まりを加速させる。美しい『She’s The One』のメロディが素晴らしい。そして一番圧巻なのは天井から逆さまに吊るされた状態から始まるクライマックスの『Let Me Entertain You』の名演だろう。2003年に行われた実際のネブワース・コンサートのライブ映像を参照しながら、モーション・キャプチャ技術で猿がロビー・ウィリアムズさながらのダンスを繰り広げる様子をVFXと生身の歌唱シーンとを巧みにミックスしながら作り上げた映像は、いかにも21世紀の最先端の音と映像で迫る。

 その一方で、主人公がなぜチンパンジーなのかという疑問は残念ながら最後まで拭えなかった。チンパンジーはシャブなんてやらないし、白い粉も鼻から吸わない。これまでイギリスではフレディ・マーキュリーやエルトン・ジョンが音楽伝記映画の題材になって来たが、単純に人間の人生に優劣を付けるわけではないが、ロビー・ウィリアムズの経験した葛藤など彼らに比べれば、なのである。物語は幼少期からやがてTAKE THATのオーディションを経て大ブレイクを果たすロビー・ウィリアムズを描くのだが、歌手としての彼は凄いのだが、一方でフレディ・マーキュリーやエルトン・ジョンのような、思わず口ずさみたくなるようなヒット曲が『Angels』や『Rock DJ』のみというのは寂しい。幼少期の父との不和も普通で、父親の蒸発癖もあの程度ならいたって普通である。お婆ちゃん子として幼少期にはいつもテレビの前でお婆ちゃんと仲良く並んで観ていたエピソードもわざわざ映画にする程の事とは思えない。母親に至っては、いつも家にいるのにほとんど没個性で、もっと何とかならなかったのかと思う。TAKE THAT時代のメンバーやマネージャーとの確執ももっと深掘りして欲しかったが何だかダイジェスト的で残念である。ちなみにOASISのリアム・ギャラガーに恋人を寝取られた話は本当だがその時期は被っておらず、酒場の描写はあくまで映画的演出に過ぎない。リアムは似ていて笑った。何気に中絶の場面も描かれているものの、何だかなぁという感じである。実際には彼女と別れた後、アイーダ・フィールドという女優と結婚し、4人の子宝に恵まれているのだがその描写は一切なしで、実際の奥さんや家族が今作を観たらどう思うのかお伺いしたい気分に駆られる。
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