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父と娘のakrutmのレビュー・感想・評価

父と娘(2023年製作の映画)
3.6
出産後に母親が失踪してから、一緒に幸せな暮らしを築いてきた父と娘。美術学校へ通うために娘が父親の元を離れることになり、二人の新たな人生が始まろうとするときに、母親という過去が再び意識されることになる。そんな二人をそれぞれの恋人との関係とともに描いた、エルワン・ル・ドゥック監督のドラマ映画。

ずっと二人で暮らしてきた父と娘の絆がユーモアを交えて温かく描かれている点は共感が持てる。父親を演じたナウエル・ペレーズ・ビスカヤートは、父親役が似合いそうな印象はあまりないが、それだからこそ娘を男手一つで育ててきた父親らしくない父親を説得力を持って演じている。冒頭で20歳の青年として登場したときにはさすがにびっくりしたが。思春期特有の複雑な内面の娘を演じたセレスト・ブリュンケルも良かったが、ナウエル・ペレーズ・ビスカヤートに比べて目立たなかったのはちょっと残念。『スペアキー』の彼女のほうが魅力的だった。

一方で、失踪した母親をめぐってのストーリーはちょっと不満。父と娘の二人だけという環境をつくるためだけのキャラのようであり、母親そのものに人間味が感じられない。それだけに父親が彼女を想い続けるという設定が現実味に欠ける。なので、ラストシーンがちょっと響かなかった。なお、この母親を演じたのは俳優ではなく、ダンサー・振付師として活躍しているメルセデス・ダッシィなので、個人的にはネガティブだったが、監督の意図通りの演出なのだろう。

・娘のローザの恋人を演じたモハマド・ルーイディの、どこかとぼけた雰囲気が良い。

・なぜか、ワンシーンだけ(市長役で)ノエミ・ルヴォウスキーが出てきた。
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