さすらいの用心棒

いのちぼうにふろうのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

いのちぼうにふろう(1971年製作の映画)
3.7
深川安楽亭にたむろする悪党たちが、恋人の身請金を盗み出して袋叩きにされた若者にほだされ、命を捨ててゆくノワール時代劇。

小林正樹監督も仲代達矢も山本周五郎も大好きで、どうしても見たかった作品。『人間の條件』や『切腹』を撮った監督が山本周五郎を映画化したらどうなるのか?
邦画界の低迷期である70年代に義憤に駆られた小林正樹のほか、黒澤明、市川崑、木下恵介らが「四騎の会」を結成し、『どですかでん』や『どら平太』など山本周五郎原作の映画企画を立ち上げてゆくなかで生まれたであろう企画のひとつが本作、だと思う。
仲代達矢や勝新太郎といった俳優陣がそれぞれの個性を大いに発揮しているし、陰影の強い画のなかで空間を活かしたカメラワークなど、いつもながら素晴らしい出来なのだけど、なぜか場面のつなぎ方が非常に気持ち悪くて、これは編集が悪いのか脚本が悪いのかちょっとわからない(脚本の隆巴は主演の仲代達矢の奥さん!)。
山本圭を守るために何人もの優しきアウトローがあまりにも呆気なく死んでゆくが、あれは山本圭が戻って来ようが来まいが、お陀仏だったのではないかという気がする。そういう意味では彼らの死は犬死ではなく、やっぱりニヒリズムよりもヒューマニズムの物語だったんだなと思う。だが、小林正樹の毒々しい演出がその印象とマッチしないために、結局どういう話かよくわからないまま感想がふわふわしてしまう(笑)
原作の『深川安楽亭』を読むことにする。