さすらいの用心棒

アガサ・クリスティー ねじれた家のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

3.0
大富豪の毒殺事件をめぐる一族の骨肉の争いを描いたアガサ・クリスティの推理小説を映画化


原作は未読だけど、アガサが自身の最高傑作のひとつとして挙げている作品のひとつ。これまで数多く映像化されたアガサの小説にしては珍しく、これが初の映像化らしい(調べたけれど過去のドラマ化などもなかった模様)。結末の衝撃さを見るとアガサが自信作として数えるのも理解できるが、これまでの映像化が難しかった理由もわかる。

ウチの母の大好きな英国貴族ドラマ『ダントン・アビー』の脚本家が脚色したこともあってか(これも未見です、すみません)、40年代の英国街の美術や、一族間のネチネチとした争い、ウィットに富んだ会話など、それっぽい雰囲気は割と楽しめた。音楽の使い方も良かったと思う。

ただし、主人公の私立探偵と依頼人の女性がかつて恋仲だったという設定のうえ、なぜ破局したのか、具体的に何があったのかという点について具体的なことは最後まで語られず、他のキャラクターの描き方や展開の粗雑さが目立ってしまって(終盤のカット割りは特にひどい)、あまり集中できなかったことは残念。おそらく同じプロットでもクリスティの筆致をもって接していたら、楽しみ方は数段上がっていたかも知れない。

ちなみに、結末については『ねじれた家』の十数年前に圧倒的な完成度をもって発表された超有名推理小説があり、大学時代にそれを読んでしまっていたので、あまり驚けなかったのが正直なところ。
骨肉のドロドロとした話が好きな人には良い作品だと思うけど、そういう人には本邦の『犬神家の一族』を見てほしいなという想いがあります。