作品全体から伝わる圧倒的な熱量に加え、俳優陣の演技も凄まじい。力みすぎなとこも逆に良かったし、圧倒される。主演の仲野太賀や山田孝之は言わずもがな、それぞれのキャラクターと表裏一体となった演技を見せる。さらに、ほかのキャストもそれぞれの個性が自然に溶け込み、味わい深い。
特に印象的だったのは佐久本宝演じるノロだ。彼は主人公・政のことを「あにぃ」と呼び、実の兄のように慕っている。何を考えてるの分からない謎めいた部分と愛らしい一面を見せつつ、いざという時には驚異的な力を発揮する。そのギャップが魅力的だった。尾上右近の演じるキャラクターも、作品の血と汗に塗れた殺戮の世界観にユーモアをもたらしていた。特に、焚き火を囲んで賊軍たちが踊り明かすシーンでは、彼だけ明らかに手先のしなやかさが違い、さすが歌舞伎役者だと感じさせる。
千原せいじは、演技なのか素なのか分からないほど自然体で、岡山天音の知的でクールな佇まいも作品の中で際立っていた。とにかく、全員がそれぞれの持ち味を活かし、唯一無二の存在感を放っていた。
一方で、劇伴にはやや違和感を覚えた。まるでハリウッドの超大作やマーベル作品のようなダイナミックな曲調が使われており、本作の持つ泥臭さや人間味あふれるドラマとは少しミスマッチに感じられた。
加えてナレーションがそもそも必要だったのか疑問だし、もっと作風にあった声質のキャスティングがよかったのではないかと思う。一気に歴史番組感がして残念だった。
カメラアングルは白石監督らしく、恐ろしくもあり爽快と感じてしまうショットが多く、仲野太賀の刀を振り落とすシーンでの斜めアングルはかなりイカしていた。