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五瓣の椿のbluetokyoのレビュー・感想・評価

五瓣の椿(1964年製作の映画)
3.2
一部と二部に分かれている。もし、こんな長い映画は見ていられないと思ったら、二部だけ見てもいい。
岩下志麻さんが、こんなに可愛らしいとは思わなかった。

あらすじを簡単に。主人公のおしのが最後の方で、全部、しゃべってしまうけど。
むさし屋喜兵衛が結核で、死にそうになっている。懸命に看病するおしの。
なのに、喜兵衛の妻、おしのの母、おそのはどっかに遊びに行って、帰ってこない。
亀戸天神近くの別宅におそのがいることがわかって、喜兵衛は病を押して会いに行く。おしのが付き添うが、あえなく途中で亡くなる。
それでも別宅に到着。おそのは若い男といちゃついていた。気味悪いから、死体なんて持ってくんじゃないわよ、とご機嫌なおその。
怒るおしのにおそのは、べらべらと秘密をしゃべってしまう。
実は、喜兵衛は、あんたのおとっつあんじゃないよ。本当はね、あんたのおとっつあんは、袋問屋の丸梅源次郎なんだよ。あいつとセックスしたら、妊娠しちゃって、慌てて、番頭の喜兵衛を婿にとって結婚したんだよ。アハハハハハ、はらいてー、うけるー、と浮かれている母親のおその。
なんでこんなときに、そんな話をするの! このくされ外道が! ぶっ殺す! と切れまくったおしのだが、すぐに飛び掛かったりしなかった。
母親のおそのと若い男が寝入ってしまってから、別邸に油をまいて火をつけたのだった。
そのあと、おしのは、おそのと関係の深かった三味線弾きの岸沢蝶太夫、医者の海野得石、香屋清一と殺していった。
ここらへんが第一部。
お歯黒について。
第一部では、お歯黒をしている女性が出てくる。おそのがお歯黒なのだ。お歯黒というのは、虫歯予防かなんかのために歯を黒くコーティングするのである。江戸時代以前、女性はお歯黒だったのだ。既婚者とも言われているが、もちろん、既婚者に限ったわけではない。江戸時代よりも前は、暇な男性(貴族)もお歯黒をしていた。
江戸時代は日常的でも、現在、見ると、なんか、化け物みたいに見える。
この映画の第一部では、腹黒そうな年増の女性が、みな、お歯黒で、おしのや清純そうな女性は、お歯黒をしていないのだ。これでは、見る者に間違った印象を伝えるし、演出としては、アンフェアだ。全面的にお歯黒はなしにした方がよかった思う。

第二部は、加藤剛さん演じる、与力、青木千之助が登場し、がぜん、面白くなってくる。結局、千之助は、事件を解決したわけでも、おしのを捕まえたわけでもない。だが、おしのの殺人を、千之助の視点で事件として、捕らえ直していくのだ。
おしのの殺人は、まだ続く。おそのの連絡係だった佐吉を屋形船に呼び出す。いつもの簪で、と思ったら、佐吉が簪を取り上げてしまう。ヘヘヘ、その手は食わないよ、と言っている割に、鉄瓶の湯をかけられ、あちちちち、と言っているうちに殺される。
いよいよ最後の殺人。その男は、袋問屋の丸梅源次郎、つまり、おしのの実の父親なのだ。このシーンが、緊迫感、気迫があっていい。
結局、おしのは源次郎を殺さなかった。その代わり、自分が自首して、いままでのことを洗いざらい公表することにした。生きている間、ずっと苦しませるためだ。
おしのは、牢に入るわけだが、沙汰が決まる前に自殺してしまった。千之助、ほか牢番は悲しんだ。終わりである。

おしの自身が結核に感染しているので、結局は助からないのだろうけど。結核が体を蝕んでいくのと、青木千之助の捜査の手が伸びてくるのと、おしのの殺人の達成、どっちが早いか、という悲しいせめぎ合い。とくに第二部の後半は畳み掛けるような展開だ。
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