このレビューはネタバレを含みます
冒頭の雨と川の場面からして、荒れている川岸に母親の田中裕子の姿を見つけた池松壮亮が対向車のヘッドライトを浴びて再度見ると田中の姿がなく、再び通りがかったトラックのライトのあと端から身を乗り出していた池松は川に転落している、という連鎖があるように、光は本作で不吉なものとして描かれている。光が作り出す虚構、ということで映画に近いようで遠い題材を扱っているためか、正直これは『生きちゃった』とか『アジアの天使』辺りと同じ、ダメな方の石井裕也だと思う。人の心、急進化するAI、経済格差、死の自己決定権(とそれに伴う「人間の価値」)等々、盛り込み過ぎでどれも芯を食っていない脚本も問題。