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エフィ・ブリースト デジタルリマスター版のT0Tのレビュー・感想・評価

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2024.9.17 59-83

切ない。
誰にも何か伝わる事なく、「彼は正しかった」と納得させて死んでいった。
最後の誰も座っていない静かなブランコに、エフィそのものを失った喪失感、喪失させてしまったこの物語へのやり切れなさを感じる。そしてある意味では正しいのかもしれないが、しかしやはり的外れな、「躾を徹底していれば良かった」という母の後悔が虚しく響き、断続的に落ち葉を踏んだような軋む音が聞こえる。

自身の生き方を決定した経験(トラウマ)について、「魂の底」において告白する場面において話し手がカメラ手前に位置し、観客を向いて話し、聞き手は話し手と同じ方向を向いて聞いている構図が反復する。一度目は、使用人が話しエフィが聞く場面、二度目はエフィが話し母が聞く場面。いかにも演劇的な演出である。しかしなぜ、エフィの告白は、自身の奥深い感情の吐露のはずなのに、夫の正しさを自身に納得させることに帰着するような、どこか他人を気にした告白なのだろうか。やはりこれは、母に聞かせているのだろうか。
このように考えるならば、子どもに再会した後の、夫の子どもの教育への失望、夫の度量の小ささに由来する残酷さを確信し、自分の境遇への呪詛を吐き出す場面こそが、告白、誰にも聞かれてはいけない告白であるように思う。椅子の手すりにもたれかかり(これは時節見られる膝に頭を擡げる場面の反復にも見える、ただショットは顔を目一杯映す)、地に向かって訴える。
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