このレビューはネタバレを含みます
中原中也は神童で、私みたいな凡人が悩むような事はフンと言って、何手も先のことばかりを考えてる。涼しい顔で、凡人の振りをしているけれど、頭の中では色々な言葉が右から左に行き交っているに違いない。誤魔化すのは馬鹿らしい。自分の血肉をすり減らしてこその人生だと、神童はそう言っている。
小林と散りゆく花について考えるシーンはすごい。私は絶対に考えつかない思考回路。いや、寝不足のあたしがギリ考えつくかも。
ただ、これから散る花を見る度に思い出すような、ものすごく好きな話だった。
長谷川泰子もまた、心を心のままに。
無い感情を生み出すって本当に難しい。それをひとつの人生丸ごとかけて、中原中也はやってのけたのだと、ラストそんな気持ちで見ていた。
素直で難しい。泰子のほんとひと掬いを理解するのも難しい。泰子は美しくて、汚い。
あえて傷つきに行ったり、茨の道に進んだりしているようにも見えるけれど、心に正直に自分がきちんと幸せになろうとしているようにも見える。
神経で繋がる。それは、人生を掛けた本気の恋。
どの角度から見ても美しいモナリザみたいな女。
ぜんぜん関係ないけれど結核で人がバンバン死ぬ中、1998年88歳まで生きたのもかっこいい。
小林は才能のままに、自分に素直に生きた人間。自分の才能を誰よりも理解していた。天才に嫉妬する自分に蓋をせず素直に受け止めた上で、中原を心から愛していた人の1人だと思う。
本当に愛していたんだと思う。この物語の矢印はみんなに向いている。鑑賞し終えたとき、これは一方通行の三角形じゃないと思った。
人間の恥みたいなものを1番汲み取っていたのは小林であろう。分析力にたけているということはまた、自分自身の情けなさも人一倍わかっていたはずだ。
「一つのメルヘン」と言う詩が1番好き。
中原中也は全く寄り添ってくれない。
ただ、世の中にはこんな感情もあり、こんな考え方がある。
自然が語りかけて来る声に耳を傾け、相手の足を引っ張ることや、自分がいかにすごい人間か知らしめることは、人生においてどれほどまでに無意味な事か教えてくれる。
かえらないから美しいのだ。