「小さな小さな奇跡」とでもコピーを付けたくなるような、とても素敵な佳作だった。
人の死。
それも特に大切な人の死を、人は簡単に受け止めたり、受けいれられたりできない。
思いきり号泣したって、暴れたって、吐き出したって、そんなことは何の解決にもならない。
それで昇華できてしまったりするのは、しょせん、お話のなかだけだ。
ここに出てくる誰もがそのことをわかっている。
だから、彼らは泣かないし、叫ばないし、暴れない。
ただじっと静かにその死を抱え続けている。
映画も叶海の死を決して劇的に描こうとしない。
前を向くことができない。
それでも彼らが生きていかれるのは、周りの人のやさしさがあるからだ。
死を受け入れらないで苦しんでいる人を、支えたいと願うやさしさ。
ただ単にそばにいてあげたいと思うやさしさ。
映画はさまざまな形のやさしさを描き、それを小さく小さくつなげてくる。
「アイミタガイ」はご縁。
人は一人では生きていかれない。
どこかで誰かの力に支えられ、誰かの力になっている。
それは映画の中では極端に描かれているが、鼻につかないのは根底にやはり「やさしさ」があるからだろう。
映画のようにはつながらないかもしれない。
直接、関係もしてこないかもしれない。
気づかないかもしれない。
それでも、人のやさしさはきっとある。
そう信じさせてくれることが、静かに胸を打つ。
役者さんたちの自然体の演技がこの映画の「現実感」をさらに強める。
人の死を乗り越えなくてもいい。そんな必要はどこにもない。
ただ、それでも前を向いて一歩踏み出すことはできる。
それを支えてくれるやさしさは、きっと誰のそばにもある。
じわじわと温かい気持ちになり、じわじわと涙が滲む。
そして、ほんの少しだけ小さな救いになる。
そんな映画だった。