このレビューはネタバレを含みます
「コーリッジ所長、終わったのはあなたの方よ」
『名もなき者』、『ブルータリスト』、『アノーラ』と連日アカデミー賞関連作品を鑑賞し、早く『ウィキッド』も見なきゃ!とせかせかと毎日を過ごしていると、毎晩高級料理店でご飯を食べているような気分になり、少し胃もたれします。
「難しいこと考えず、サクッとおいしいラーメンを食べたい!」
そんな気持ちにこたえてくれる一本でした。
しかも、麺、スープ、焼豚などどれをとっても完璧で無駄のない、そんな映画だったと思います。
例えば、
「麻薬カルテル組織から金を横領した会計士と、彼を裁判の証人として法廷に連れていく現場復帰したての保安官」
という背景の説明のみで映画は進み、事件の真相など重要なことは終盤に明かされますが、無駄な情報は一切明かされません。
また、主要人物3人以外の顔も、ほぼ出てきません。声のみの出演が多いです。
これくらい情報を整理しているからなのか、フライト中のおんぼろセスナの中で今起こっていることに観客を集中させる作りになっているように感じました。
だからと言って淡泊ではなく、例えばカメラですが、セスナ運転手を映しながらも後ろで何をしているかが、ピントがぼやけながらもわかるようになっています。
それによって、誰がナイフを持っているか、誰が縛られているかというパワーバランスの転換をスリリングに演出しているように思えました。
確かに華は少ないですし、ストーリも読めるかもしれませんが、逆にそれでいてこれだけ観客をのめり込ませるメルギブソン監督の手腕を堪能できました。