1940年、第二次世界大戦下のイギリスはロンドン。母子家庭に育つ九歳の少年で、断続的なナチスによる空襲「ブリッツ」を心配した母のリタに疎開用の汽車へと乗せられたジョージ。発車から一時間後、母への再会を望んで汽車を飛び降りた彼が、ロンドンへの旅路の中で戦争と黒人との混血である事実に向き合う様を描いたドラマ映画です。
黒人奴隷制時代の米国南部を描いた『それでも夜は明ける』をアカデミー賞の作品賞に導いたスティーブ・マックイーンが監督に加えてプロデュースと脚本も兼ねたAppleスタジオ制作の作品で、2024年に配信公開されると主演の子役エリオット・ヘファーナンと彼を支えるシアーシャ・ローナン織り成す物語が批評家から高く評価されました。
戦争映画ながらテーマはマックイーンが黒人監督の立場で語り続ける人種問題で、人類史でも有数の差別政策であるホロコーストの第二次世界大戦を舞台にすることでそれを際立たせています。本筋は一直線のロードムービーでも回想や場面切り替えの多様で混乱する所もありますが、熱のある演技と演出がテーマの重みを支えている一作です。