針

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声の針のレビュー・感想・評価

3.8
2000年公開の映画の、リドスコ本人による実に24年ぶりの続編。……と言われても『トップガン』とか『ビートルジュース』のおかげで全然驚かなくなりました😌
前作ではまだ子どもだったルシアス(ポール・メスカル)が、英雄マキシマスの軌跡をなぞるかのように剣闘士の立場に身を落とし、腐敗したローマ帝国に立ち向かっていくというお話。
自分の感想をまとめると、
◆①サービス満点の娯楽映画として楽しい!
◆②デンゼル・ワシントン様!!!
◆③しかし続編としてもリメイクとしても気になるところは多々あって、今作の存在意義は……?
 という感じ。

◆①冒頭の海戦からして迫力満点! ヒヒ、サイ、サメなどゲスト・ケダモノも総じて大仰&無茶で、出血大サービス映画という感じ。コロッセオってすかすかに見えるけどあんなに建て付けよかったんだ⚔️
それと前作より闘技シーンのカット割りが見やすくて、戦闘アクションの楽しさはこっちのほうが高かった気がします。ハイテンポで退屈する暇なし。結局エンタメ映画が上手だなーと。

◆②デンゼル・ワシントンには正直そんなに親しんでませんが、この映画の彼は”様”づけで呼びたくなるほどの存在感でした! 彼を使って全体の厚みを増そうっていう狙いでのキャスティングだろうけど、いろんな意味でこの映画を丸々喰っちゃってると思ったなぁ。それでいいのか?! というところも含めてネタバレコメントにちょっと書いときます。登場キャラの中ではブッチギリで彼が一番好きでした😊

◆③笑っちゃうほど完成度が高い前作『グラディエーター』に続編なんか必要なの……? というのは観る前から思っており。『Ⅱ』は正直、続き物としては別になくてもいい物語で、でも前作とは違う何らかの見ごたえがあれば単品として全然いいのでは、と思ったのですが……。
ストーリー&テーマがほぼ一緒という。プロット自体はひと捻りしてあってそこが面白いけど、たどり着く先はだいたい同じでちょっと異様なぐらいソックリでした。なのでストーリーアイデアの新規さという点はほぼ皆無かなぁと……。
たぶんマキシマスの道程をルシアスがなぞることを通して、”英雄はよみがえる”っつうことを語っていて、テーマ的にも”あるべき理想の再生”みたいなものになるんでしょうけど……。自分的には、ほぼ同じ話が二度に渡って繰り返されてること自体が、マルクス・アウレリウス→マキシマス→ルシアスというラインが掲げる「理想のローマ」像のどうにもならない弱さを示している気が……。そしてそうしたあるべき政治の形みたいなものが、映画の外の現実世界で20年来敗北し続けてることの、これ以上にない証左なのでは……みたいなことは思いました。えんえん現実化しない理想だからこそ二度も掲げられちゃってるっていう?
・あとはルッシラも、恋するヒロインから母親へと立場が変わってるのに物語上で演じている役割がほとんど同じなのは流石にちょっとなぁと。
・これはストーリー中盤で”明かされる”けど事実上ネタバレには当たらんと思うので書いちゃうんだけど……。前作のストーリーからすれば、ルシアスってどう考えてもマキシマスの息子なわけないよね? 仮にそうだったらマキシマスとルッシラの関係がああいうぎこちないものだったはずがないし。それともこれって、ルシアスはマキシマスの精神性を受け継いだ”息子のごときものである”っていう一種の比喩的レトリックなんでしょうか? 実の息子だということならさすがに続き物として無理があるような……。「血統」に運命とか正統性を見いだす感じも正直ちょっと古めかしいとは思ってしまったなぁ。

●その他
『ナポレオン』ほど急速じゃないけどけっこうビュンビュンな展開で、アクションが矢継ぎ早に続くからずっと楽しくはあるんだけど。代わりに作中世界の説明もほぼない。自分が一番思ったのは、この世界の最大の”力学”である、「ローマではコロッセオの移り気な聴衆を味方につけた者が政治的勝利を収める」的な部分の説明もあんまりちゃんとなされていないこと。まぁ前作を観てる人にとっては言わずとも分かることではあるのですが、実はこちらがいろいろ脳内で補完しながら観てた部分はちょこちょこあったのではないか、とは思いました。

ともあれリドリー・スコットには次の映画もまた撮ってほしいです。残りの感想はコメントに。
針