Omizu

アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方のOmizuのレビュー・感想・評価

4.0
【第97回アカデミー賞 主演男優賞、助演男優賞ノミネート】
『ボーダー 二つの世界』アリ・アッバシ監督の英語映画。カンヌ映画祭コンペに出品され、アカデミー賞では主演男優賞(セバスチャン・スタン)と助演男優賞(ジェレミー・ストロング)にノミネートされた。

まあ正直受賞はどちらも難しいと思うが、特にストロングはロイ・コーンという難役をものにしておりキャリアベストではないだろうか。観る人によってスタンスが分かれる映画だと思うが、トランプを徹底して空虚な人物として描き出すことに成功している傑作だと思う。

アッバシはこれまでダークファンタジー、サスペンスを見事に作りあげていたが、またしても新境地を切り開いてみせた。実在の人物、それも現役バリバリのアメリカ大統領を外連味たっぷりに描き出している。

最後の方、怪物のようになったトランプの恐ろしさが印象的というレビューが多々あるが、というよりは「ロイ・コーンをトレースしただけの人形」として描き出されていると思う。

もちろん今のトランプにスタンが似てくるというのは間違いないものの、徹底して「自分がない人物」としてトランプが描かれることにアッバシの狙いはあるように思う。

非情で残酷なロイ・コーンを演じたストロングの怪演はアカデミー賞ノミネートに相応しいし、実在の人物を恐れずに演じたスタンも偉い。妻役のマリア・バカローヴァも素晴らしかったな。

トランプの政策に揺れる今、トランプとはどう作りあげられた人物なのかというのを知る意味で非常に重要な作品だと思う。アッバシの幅の広さを証明した映画でもあり、個人的には暫定今年ベストの傑作だと思う。
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