私は藤井道人監督作品の空撮が大好きなんです
前作「青春18×2 君へと続く道」でも移動描写での空撮がとにかく素晴らしかった
本作では移動描写に加え場所そのものの存在感を描くのに空撮が効果的に使用されていたと思います
ただ空撮シーンを入れるのではなく構図や速度も計算されていて物語上必然的に機能している事が邦画に限らず最上級の演出になっていて
映画館での鑑賞体験としてすごく贅沢な気分が味わえます
※個人の感想
全体的には静の演出が丁寧で良いのですが、逃走パートでのワンカットに繋がるアクションシーンの激しさなどVFXも駆使した映像も新鮮でとにかくカッコいい
アクション面でも満足度の高い作品
個人的に藤井道人監督は実写映画においては新海誠監督のようなポジションだと勝手に思ってます
作家性が強く映像や構図の美しさのアート性もあるのに作品としては大衆向けのチューニングが行き届いている
めちゃくちゃクオリティが高いのに興行成績が足りなすぎるぞ
もっと観客動員されるべきだし、もう監督の名前だけで鑑賞しちゃって良いやつだと思ってます!!
冤罪というテーマをベースに構成しているけど、エンタメとしての面白さが軸としてあるのでテーマ先行で重くなりすぎない絶妙なバランス
かといって決してテーマが薄まるわけではなく人が正しい事をただ正しく判断する事を信じる
ただのきれいごとになってしまいそうなものに真正面から真剣に向かい合った作品
キャスト面でも、藤井道人作品の常連である横浜流星はもちろんですが
吉岡里帆や山田杏奈などが藤井道人監督作品に馴染んでいるのも新鮮です
吉岡里帆は女優としてもっと評価されるべきだと常々思っていて
他の作品でも不運な境遇になってしまった役の悲壮感を絶妙に調整するのが上手く、振り切りすぎると観客のストレスになり過ぎてしまうところを良い落とし所で演じてたりします
声質の聴き心地の良さが、感情的なシーンでも不快にならず役の感情に不要にノイズが混ざらない
何よりその圧倒的なルックスを悪目立ちさせずに見せれるのは演技力あってのこと
なんでも無いシーンでも表情のコントロールが仕上がっていて吉岡里帆を主張しすぎない
これは横浜流星も同様で、この2人の作品内での収まりがすごく良いので、是非ともまた別の作品で共演してほしい
あとあと考えると決してツッコミどころがないわけでは無いのだけど、それが鑑賞時のノイズになる事はないです
これはエンタメとしての演出が優れている証拠
この安定したクオリティの高さが藤井道人作品の魅力
本作のラストのとある無音演出…
これは私自身が世の中を信じられるかを試されているのだなと
あの無音シーンで一瞬でも疑ってしまった私はダメなんです
信じ切る事が出来なかったんです、権力に屈してしまったんです
お見事すぎる締めでやられました
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▼劇場
チネチッタ
CINE7
▼作品名
正体
▼日時
2024/11/30(土)
20:25~22:35
▼座席番号
G-5