あんず

正体のあんずのネタバレレビュー・内容・結末

正体(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ずっと観たかった、スクリーンで観られて良かった。今まで私が観た藤井道人監督の作品の中では1番好き。ただ、横浜流星の序盤の変装がいかにも変装って感じで不自然で、逆に目立つ気がした。

『正体』というタイトルから、主人公鏑木慶一(横浜流星)が何者なのかを探って行くのがメインテーマかと思っていたら、それ以上に彼を追い詰めるものの正体について考えさせられる作品だった。そしてそれは、スクリーンの外の自分たちの置かれている実社会の歪みについて示唆しているようにも思えた。昨年は袴田さんの冤罪が確定したし。公共事業「なにわ万博」の工事現場で起こった事故を巡るやり取りは、あながちフィクションとは言い切れないのではと感じた。

最初から最後まで、鏑木だけがブレずに自分の信念に従って一貫して行動していた。私も疑うことなく彼をずっと信じていた。どんなに変装して荒んだ生活をしていても、意図してなのだろうが、横浜流星の演技は潔白を信じさせる心根の美しさや気高さを感じさせた。だから、少し出来過ぎな感じのある終盤ではあったけれど、納得行くものだし、映画の中でくらい希望を持たせてくれて嬉しかった。

鏑木との出会いによって、ジャンプ君(森本慎太郎)、安藤さん(吉岡里帆)、酒井さん(山田杏奈)らの人生に変化が起こったことも嬉しかった。

酒井さんと鏑木が雪景色の湖を見ているシーンが素敵だった。鏑木の隠し切れない本心が出ていて。
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