(失礼なんだけど)横浜流星の顔が好きなので観ました
そんな入り口だったものの、この作品はしっかり心をつかんできた
死刑囚、鏑木慶一が拘置所から脱獄するところから始まる
18歳から3年間、拘置所で人生の1番大事な時期を奪われた。大学に行ったり、あるいは就職したり、友達とご飯を食べたりお酒を飲んだり、恋愛したり…普通の子が経験する色んなことを経験する機会を奪われた彼は、生きるために逃走する。
ただ一つの理由から
鏑木くんは優等生。もともと頭が良い(読書家でもある)、そして素直。だからこそあんな行動を起こせたんだと思う
感情の動きがとても丁寧、だけど所作に大胆さと躍動感があって画に凄く引き込まれた。設定にこだわりすぎず、感情だけで走らせた感じした、そこがよかった。
こう言うタイプの日本映画って答えが出なかったりすることが多くて、ラストもあいまいで暗くなりがちなんだけど、きちんと書き切っていたところが素晴らしいと思った。観終わったあと、清々しい気持ちになった
冤罪というテーマを通して、検察やメディア、そこに絡む利権などの社会問題が浮き彫りになる。裁く側だけの問題じゃなく、マスコミも確実に加担している。社会全体が一種の“集団断罪”みたいな空気を作り出してしまう。
多くの人が、組織に所属することで安心し、それが人生の目的になって目が眩んでしまう。だけど本当に大事なのは個人として人とつながること。この作品はそこへの切り込み方が上手かった
だけど、良かったと思う1番の理由は”社会派ドラマ”の側面じゃなかった
信じて成し遂げたことの偉大さ
彼は逃げてるんじゃない、人生に目的を持って、主体的に動いている
目の前の人生に意味を見出し、自分のストーリーを語れる人は強い
この作品は、そんなことを静かに、でもしっかり示唆してくれていた
「信じたい」っていう思いからあそこまでできる精神、鏑木くんのその強さの背景は何なのか、それはどこで育まれたのか、
養護施設で過ごした日々、愛のある人が周りに沢山いたからかな
所長だったと思われる老女がさらっと神様の存在にも触れていたけど、原作ではそのあたり、どこまで描かれているんだろう
役者さんよかったな。横浜くんもだけど、山田孝之の控えめな演技よかった
エンディングのヨルシカがすーっと心に入ってきてなんか余韻よかったなあ