舞台は近未来の日本。人口減少や人材不足を理由に難民の受け入れが緩和された(と思われる)世界。街中の人々は日本人だけではなく、国籍も様々。それは学校でも例外なくありふれた光景になっている。日本国籍を持たない人物は在留証明書の携帯を義務付けられる。学校では校則を守るために学生たちの行動が監視され初める。緊急地震速報のアラートは日常的に流れ、デモも加速する。そんな可能世界が舞台。
主人公の1人であるユウタの実家はとても裕福だ。ユウタは音楽研究部に所属し、夜な夜な校舎裏に忍び込んで音楽を楽しんだり、クラブに行く。時々仲間内でアルコールを飲んだりもする。そして親はそんな息子を縛り付けていない。いかにも若いうちに何でも経験させておこう系の都内在住富裕層の子供である。
そんなユウタの親友・コウは、在日朝鮮人で実家は韓国料理店を営んでいる。コウの実家の経済状況はあまりに良くない。奨学金承認の知らせを受けた時の喜びようからも伺える。
世界が少しずつ変わる中で、仲良しだった2人に徐々にすれ違いが生まれる。政治に関心が芽生えるコウと気にせず学生生活を謳歌したいユウタ。経済状況の違いが意識の差に如実に現れている気がする。でもコウが言う危機感のようなものには、彼の中で明確な意見がないように思える。ただ政治に関心のある自分を作りたいだけのようにも見える。煙草を吸ったり、真夜中の学校に忍び込んだり自分たちのルールは破るが、学校側が強いるルールに対しては強い反発を持つ。
知識がないけど背伸びはしたい。自分の行動は一旦隅に置いていて意見は言いたい。この傲慢な青さが若さだと思う。校長の車を立てたのはコウだと思うけど、その罪を被ったのはユウタなんだろう。見せ方によってはかなり説教くさい作品にもなりかねないが、ユーモアも結構あるのが良い。絶妙にリアルな近未来の設定も面白い。映像の質感も邦画っぽくなくてオシャレな台湾映画っぽさもある。2024年を代表する必見作品です。