ヒラセシオ

ブルータリストのヒラセシオのレビュー・感想・評価

ブルータリスト(2024年製作の映画)
4.5
フィルムで撮られた映像が美しかった。

エルサベートやハリソン達が水辺で昼食をとるシーンは、ルノワールの絵画のようでもあった。

建築の話をすると、建築家は空間を使って人間の感情や記憶をコントロールすることができると個人的に思っている。
伊東豊雄の中野本町の住宅や、ローマのパンテオン、アルベルト•シュペアーのナチス建築がいい例だ。
建築家は寸法やスケール、マテリアル、開口部(光)をデザインし、その建築を使う人がその場所でどう感じるか、どう過ごすか考える。

ブルータリズムの起源は、建築家が組積造(煉瓦造)の構造的制限から解放され、自由に平面や立面をデザインできるようになったその先、、、
彫刻のような自由な3次元造形の追求だと思える。
その彫刻性には、装飾やマテリアルいったものは、あえて不要で、コンクリート剥き出しのまま、造形そのものに意識を向かわせる。
だからブルータリズムの建築は、空間の力が強い。表面的な装飾を考えない分、スケールや開口部といったものに意識を集中させるからだ。
ラスローがマーガレットコミュニティセンターを設計する際、天井の高さに異常に拘っていた。
収容所にいた時の暗い記憶の出口が、高い天井の上部の開口部から見える明るい空であり、その空は離れ離れになっていた愛する妻が見ている空と繋がっているのだ。

ブルータル、野獣のような建築に見える一方で、実はとてつもくロマンチックな建築なのかもしれない。
ヒラセシオ

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