TakayukiMonji

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWNのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN(2024年製作の映画)
4.5
Searchlight主催の試写会に参加。
(試写スタジオ、音良かった)

大傑作。素晴らしい。
元々は「ボブ・ディラン裏切りの夏」を原作としているようだが、何よりもボブ・ディラン本人のお墨付きをもらっている作品とのことで期待は高まっていたが、期待通りいやそれ以上の文句のない作品だった。
ティモシー・シャラメは完全にあの頃の気怠さを纏ったボブ・ディランだったし、ピート・シーガーを演じたエドワード・ノートンも、ジョニー・キャッシュ役のボイド・ホルブルック、ジョーン・バエズ役のモニカ・バルバロ、かつての恋人役のエル・ファニングと全員ハマり役と言ってもいい。「ウォークザライン」同様に、主要メンバーが全員本人歌唱してて、違和感なしで入り込んでいるのがすごい。この映画のために、ティモシー・シャラメは5年間音楽学校に通ったらしいが、乗り移っていたと思う。

あの名曲が生まれた瞬間や、あの名曲のこのフレーズがセッションされる瞬間みたいなことがしっかり描かれていて、ここだけで鳥肌もの。ニューポートフォークフェイスティバルの伝説的なあのシーンに向かって、物語が進行していくが、「ボヘミアンラプソディ」とは違うアプローチでそのクライマックスが描かれていて、感慨深かった。

トークイベントでの話にあった、
監督のジェームズ・マンゴールドは、共通して”天才とそれ以外の人々に興味がある”という話がなるほど、と思った。時に、ギフテッドピープルは敵を作り、軋轢を生んでいくがそこと世界が繋がっていくところにドラマがある。ボブ・ディランのドラマの描き方ももちろん面白かったし、それを違和感なく再現するために、全てアクターが本人歌唱しているところに、完成度の高さと圧倒的な説得力を生んでいると思う。

僕はパンクを聞き、ハードコアを聴き、ポストロックやエレクトロニカ、エモっぽいものを聴き、その先にテクノ/ハウスのDJもしていたが、この先、ボブ・ディランを聴いていくことだけで、いいんじゃないかと思わせるパワーがあった。(言い過ぎだけど笑)

ボブ・ディランを聴いたことない人でも、初期から「Highwaty 61 revisited」まで視聴して臨めば楽しめると思う。


個人的には、“アル・クーパー、キター”となったあのシーンが堪らなかった。
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