高校2年生の時にはじめて行ったコンサートがボブ・ディランだったわたしにとってマンゴールド師のボブ・ディラン伝記(電気)映画「名もなき者」はサイコーでしたね!
ちなみにタバコ吸い始めたのもディランに憧れて、です!
(今は完全禁煙者だい)
アコギからエレキに持ち替えたディランが裏切り者と罵倒されるニューポートフェスはあまりにも有名ですけど、音楽映画としてあんまりアガらないあのライブをクライマックスに持ってきた侠気と意義にグッときましたね。
エレキで3曲やった後にアコギ一本で「It's All Over Now, Baby Blue」唄う(本当かどうかわからないけど〝泣きながら〟だったそう)姿に星野源をみたりもしましたよ。
当時、ビートルズをはじめとしたイギリスからのロックインベイジョンがあり、そんな中でフォークソングは反体制の音楽としてだけでなく、米国の愛国心とも深く結びついていた中でのディランの〝転向〟ですからね。そりゃユダ呼ばわりされるけど、自分の中の自由を貫こうとしたディランの純粋さですよ。
今やロックレジェンドのディランですけど、いくら天才とはいえ20代半ばの青二才、その才気と感受性の繊細さで揺れ動き周囲の人々から影響を受けて吸収していくのをティモシー・シャラメが見事に演じていて、うーん脱帽というほかない。
顔は全然似てないけど、映像で見る当時のディランのメランコリックで皮肉屋で繊細な感じをまんま再現しつつ、歌やギターも習得してディランそのものにしか見えなくて、ティミー坊やすごい!となっています今。
いろいろなものを取り込んで変化していくことこそディランの凄みで、その歴史の端緒を青春ストーリーとして描いているのもよかったね。
わたしの知るディランはもうちょっと傲慢で皮肉屋でヤリチンなので、いささか優しく解釈されている気がしましたけど、バエズとシルヴィとの三角関係は興味深かったです。曲ひとつで浮気がバレてる!というのに笑いました。
バエズを演じたモニカ・バルバロさんも吹き替えなしで歌ってるし、ピート・シーガーもジョニー・キャッシュも役者が歌っているところにマンゴールド師のマジを感じました。
そういえばジョニー・キャッシュの伝記映画もマンゴールド師だったな。
ピート・シーガーを演じたエドワード・ノートンがすげーよかったね。
朴訥としたおじさんなんだけど、音楽で世界を変えられるという信念を若きディランに見出すけどディラン自身がどんどん変わっていくので戸惑う、でも優しげでね。最初のニューポートフェスでディランの「時代は変わる」聴いているノートンの受けの演技はめちゃエモでしたね。
あとウディ・ガスリーを演じたスクート・マクネイリーも素晴らしかった。
ガスリーとディランの関係性がこの物語の両端に配置されていて、伝統と変革と継承、つまりは(たぶん)マンゴールド師が描こうとしたことが静謐で美しく円環していて、そこがジワジワきたし、ディラン好きでよかった…と心底思いました。
なによりも、16歳から18歳くらいの青春期にディランを聴きまくった者としては、ディラン/シャラメが爪弾くフォークギターの旋律にセンチメンタルな心持ちになり、17歳の時に札幌厚生年金会館でおじさんたちに囲まれて目撃したボブ・ディラン、正直ダルそうにパフォーマンスしてましたけど笑、アンコールでLike a Rolling Stoneはじまった時の「キター!」感を思い出しました。
ついつい一緒に唄い出しそうになってしまいましたー。
しかしディランもバエズもまだ生きてることにビビるわ。長生きしてください。