このレビューはネタバレを含みます
山奥の小さな村・麻宮村に移住した杏奈(深川麻衣)と輝道(若葉竜也)の夫婦。自治会長の田久保(田口トモロヲ)らに迎え入れられ、念願の田舎暮らしを満喫していたかに見えた二人だったが、村民たちの見せる「親切」は徐々に歪んだものとなっていく…。
監督・城定秀夫×脚本・内藤瑛亮というタッグに自分の中で高まった期待を思うと、やや物足りない印象の作品となった。とにかく全編、良くも悪くも田舎に対する悪意が満ちている。城定監督は「どちらかを100%悪に見せる描き方はしたくない」と語っているが、スーパーの店員が初対面で引っ越し祝いとして妊娠検査キットを渡してくるとか、いくらなんでも誇張が過ぎると感じる描写がちょっと多過ぎる(https://news.yahoo.co.jp/articles/beebc9be9b8a8871b190b98645136505b7acd720)。
結果、一面的で単純な物語という第一印象をどうしても感じてしまった。
ただ、城定監督の演出はいつも通り冴えていて、夫婦で向き合って緊張が高まるところを、ストーブの熱気越しの揺れ動く画面として表現する場面や、“たばこ”の象徴的な使い方、“かぼちゃ”をはじめとした何とも気まずい食事シーンなど、印象的に残る場面は多い。
そして、選択的夫婦別姓のような注目度の高いトピックを果敢に取り入れる内藤瑛亮の脚本も、“田舎だから…”ということに留まらず、日本社会のそこかしこに蔓延する、悪しき「日本的価値観」を批判の対象として見据えたものであることは汲み取れはするのだが…。