Lorena Alvarado長編一作目。LAを拠点に活動するオムネス・フィルムズは今年に入ってタイラー・タオルミーナやジョナサン・デイヴィスといった創設メンバー以外が監督した作品も世に放ち始めた。本作品はそのうちの一本であり、唯一の非英語作品、ベネズエラ映画である。主人公エナは海外からカラカスに帰ってきて、父イグナシオと祖母の家に滞在している。以前は本屋を経営していたイグナシオは今でも様々な本を収集していて、目下の関心事は希少なベネズエラ人作家の本を集めることである。一方、認知症の祖母は少しずつ記憶を失い始めていた。題名"Lost Chapters"というのは、個人から国家までの様々なレイヤーの中で、記憶されていることと忘れられていることを探り出す本作品の象徴的な名前だろう。興味深いのは、エナが父の書庫で"本に挟まった手紙"を見つけることで物語が動き出すという、同じオムネス・フィルムズ製作のジョナサン・デイヴィス『Topology of Sirens』と似た展開を持っていることか。若干ワンパターンな気もしなくもないが、あちらはカセットテープから音と空間を紐付けていて、こちらでは手紙から文字と時間を紐付けているので差異はある。本作品ではその手紙によって存在するかも分からないダニエル・ロハスという作家の『Elvia』という小説に辿り着く。ただ、エナはそちらにも興味を示しつつ、その過程で登場したラファエル・ボリバル・コロナドという小説家により強い興味を惹かれている。というように、魅力的な要素が多すぎて逆に散漫になってしまっているのが残念。イグナシオとエナは『Elvia』探しのために様々な本屋や古本市場に足を運ぶが、どこも在庫管理とか全くしてなさそうなくらい本が適当に積まれてて笑ってしまった。祖母の挿話も観客の想像に任せすぎている部分もあるが、突然失踪した数シーン後に平然とソファで寝てる幽霊みたいな存在感が画面に刻み込まれているのは良かった。ただ、祖母の挿話と文学史云々の挿話は比喩として繋がっているだけで、両者が化学反応することがほぼ無かったのも残念ポイント。