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BeRLiNのakrutmのレビュー・感想・評価

BeRLiN(1995年製作の映画)
4.4
性風俗に関するドキュメンタリーを製作している取材班が、失踪したキョーコという名のホテトル嬢を探し求めて彼女の関係者を取材していく様子を、彼女に関する回想シーンとともに印象的に描き出した、利重剛監督のドラマ映画。

主人公キョーコを演じたのは、本作が映画初主演となる中谷美紀。まだ何色にも染まっていない19歳の彼女がみせる圧倒的にピュアな演技は、一見の価値あり。すでにジム・ジャームッシュ作品など海外でも活躍していた永瀬正敏とともに、80年代の価値観が崩壊した90年代の若者の新たな恋愛観や価値観を瑞々しく表現している。

そう、この映画が描いているのは、東西冷戦を象徴していたベルリンの壁が崩壊し、日本ではバブルが弾けるなど80年代の価値観が終焉を迎え、人生の道標を失ってしまった人々。だからこそ、新しい価値観の持ち主である純真無垢なキョーコ(ベルリンの壁の欠片を身に着けているという逸話はまさにそれを象徴している)に、いい大人達が執着するのである。ダンカンが演じるサラリーマンの異様な入れ込みようはそれを端的に示している。30年弱経った今見ても、当時の懐かしい渋谷・表参道などの風景とともに、そんな時代の空気をつい最近のことのように感じることができるのは、本作の出来が秀でているからであろう。

当時活躍していた多くの有名人が出演しているのも見どころか。鈴木史郎とか福岡政行とか懐かしい。この頃は映画監督としてではなく、朝生などの論客としてマスコミによく出ていた大島渚も出演している。人違いキョーコ役でちらっと出てきた松田美由紀が笑える。
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