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プリティ・ベビーのemilyのレビュー・感想・評価

プリティ・ベビー(1978年製作の映画)
3.8
1910年代のニューオリンズ、金持ちばかりを集める高級売春宿に母と共に住んでいる若干12歳のヴァイオレット。自然と母を見て育ってきたヴァイオレットはいつか自分もその職務に就くことを望んでいた。あるとき写真家のバロックと出会う。どうやら母に恋しているみたいだが、なかなか自分の写真を撮ってくれない事に、苛立ちを感じ、徐々に惹かれていっていた。そうして彼女も売春婦としてデビューし、高値で競り落とされる。しかし母が常連客と結婚すると言って出ていき、残されたヴァイオレットはバロックの元へ行き、一緒に暮らし始める。しかしその生活も長くは続かず。

絵画を切り取ったような人物配置、色使い、世界観はどこか作り物で生がかよってない。それもそうだ。客は現実を忘れるためにここを訪れ、一瞬の夢を求める。その世界観と空気感が非常によく描かれている。女性達は妖精のような衣装をまとい、男の周りをふわふわと妖艶に舞う。スーザン・サランドンの透けるような白い肌にも惹き込まれる。

ヴァイオレットは母を見て育ち、若干13歳で売春婦としてデビューーする。それは強制でも何でもない。彼女はずっと母をそうして宿で暮らす人たちを見て育ち、そのすべてを知り、やがてのデビューに向けて、きっちりと勉強してきたのだ。そこには暗いエピソードはなく、どこか明るく自分の望みとしてその世界に染まっていく彼女。

そうして小悪魔的な魅力で男たちを魅了していく。ドタバタした明るい生活の描写が続くが、そこにはきっちりと社会問題も埋め込み、バロックの写真撮影により、すこしずつ心情をあぶりだす。罪の意識の全くない、無知な子供が売春婦としてデビューするとき、黒人のピアノ弾きや、バロックはただ傍観者としてみている。止める事もなく、ただその様子を見守っているのだ。ただピアノ弾きの表情を長めに映し、そこに秘める心苦しさは感じ取られる。

母が出ていき一人になり、バロックにも子供扱いされ再び売春宿に戻るが、それは解散の場面だった。バロックはプロポーズし、二人は結ばれる訳ですが、その幸せのシーン・・車が沼にはまり、それでも笑顔で沼の中を歩く宿のメンバー達。自由奔放に生きているような描写をされながら、それはまるで捕らわれた抜けられない沼にはまってるような、常に誰かに生かされているのを笑顔と裏腹な部分で実感させるような、美しすぎる舞う彼女たちの映像が痛々しく残酷に映る。

ヴァイオレットはいくら小悪魔ぶって、母親の真似をして男を翻弄させたところで、13歳は子供なのである。背伸びしても胸はまだ膨らみを見せず、体系もまだ子供のまま、必要とするのはやはり好きな人より、しっかり彼女を守り育ててくれる親の存在なのだ。親自身がそれに気が付いたとき、やっと彼女は子供に戻れる。
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