アドルフ・ヒトラーの腹心にして、プロパガンダを主導する宣伝大臣を務めた政治家ヨーゼフ・ゲッベルスの半生を描いたドラマは、ゲッベルスの演説、ラジオ、映画などメディアを通して国民感情を煽り、操り、ヒトラー政権を拡大させた手法を明かすことで、現代社会に警鐘を鳴らす。
1933年のヒトラー首相就任から1945年まで、ナチスドイツの宣伝大臣として国民を煽動したゲッベルスは、当初は平和を強調していたが、ユダヤ人排除や侵略戦争へと突き進んでいくヒトラーから激しく批判され、信頼を失ってしまう。
愛人との関係も断ち切られたゲッベルスは、自身の地位を回復する為に、ヒトラーが望む反ユダヤ映画の製作や、大衆を煽動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画し、国民の熱狂とヒトラーからの信頼を取り戻していく。
やがて戦況が絶望的になるなか、ゲッベルスはヒトラーと共に第三帝国のイメージを後世に残す過激なプロパガンダを仕掛ける。
ロベルト・シュタットローバーがゲッベルスを演じ、2024年ミュンヘン国際映画祭にて観客賞を受賞した本作では、ヨアヒム・A・ラング監督が、ゲッベルスが手掛けた総統凱旋パレードやスポーツ宮殿の総力戦演説から、アウシュビッツ収容所の虐殺と生存者の証言に至るまでの実写映像を織り込みながら、真摯に物語を紡ぎ静謐なショットを重ねて描いていく。