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ルート181のflyoneのレビュー・感想・評価

ルート181(2003年製作の映画)
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国連決議181号に定められたパレスチナとイスラエルの境界線(実際的にも地図の上にも存在しない線)を南から北へ辿ってゆくことにしたミシェル・クレイフィとエイアル・シヴァンは、その道中の風景や人々の営みをキャメラで捉えつつ、そこに住まう(あるいは住まわされる)ユダヤ人やアラブ人にインタビューする。
周到に配されたインタビュー場面において、多くのユダヤ人は、分断と排斥を正当化すべく声高かつ高圧的な主張を繰り返し、「最後まで話を聞け」と叫ぶ高齢の男性の存在にもかかわらず、監督らの問いかけにまともに応じることもない場面さえ見られる。対話の場にほかならぬはずの議会もまた、対話というよりは他者をいわば「論破」してやろうという暴力性の気配が濃密に漂う空間となっている。
張り巡らされた有刺鉄線や壁が分断と排斥をあからさまに可視化し、それはかつてのナチスの絶滅収容所のようだが、その歴史の反復に自覚的なインタビュイーはほとんど登場しない。
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