見返したら、やっとコーエン兄弟が何を表現していたのか理解できました。
『赤ちゃん泥棒』は南部を舞台に、人間のさがを陽気なコメディーで落とし込んだザ・フィクション万歳映画でしたが、北部を舞台に描くと、そう甘っちょろいことも言ってられなくなるのでしょうか。
カナダと国境接するミネソタ州はコーエン兄弟の出生地でもあったのですね。初めて知りました。
そういえば、雪が一面降りつもるカナダでは、娯楽と言ったらホッケーくらいしかなく、普段は温厚な性格の彼らですが、一旦火がつくと何をしでかすか分からない凶暴な一面を持っている、と話に聞いたことがあります。吹雪でホワイトアウトする映画のワンシーンを見て、確かにこれは気が狂うかもと感じました。
そして冒頭でわざわざ、これは「実話」なんだと宣言していることにも意味を感じます。(『赤ちゃん泥棒』ではわざわざ「夢」と言ってましたから)
舞台、キャラ、脚本、カメラワーク、どれも絶妙にそれぞれの機能を果たしていて秀逸ですが、これと言って心に残らないというか、ショックを要所要所で和らげてしまうため心に傷が残りにくいように感じました。
映画として傑作かと聞かれると、正直 微妙ですが、好きです、コーエン監督。『ノーカントリー』も見たくなってきました。